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第1503話
アクセルはじっと兄を見つめた。兄は相変わらず安らかに眠っており、特に返事はない。
「……はは、こういうのは兄上が起きている時に言えって話だよな。これじゃただの独り言だ」
でも、起きていたらきっと「もちろんさ」と答えてくれたと思う。
兄も兄で「お兄ちゃんとして常に強くあらねば」と考えているみたいだから、例えアクセルに追い付かれることはあっても追い抜かされるつもりはないのだと思う。
自分は兄を追いかけ、兄は高みから弟を待つ。この関係性が一番いい。ヴァルキリーの嫌がらせなんかに屈してたまるか。
アクセルは兄の布団を肩までかけ直してやり、軽く頬にキスして寝室を立ち去った。
その後は、なるべく音が出ないようリビングのフローリングをモップ掛けし、洗濯物を畳んでタンスにしまった。
そんな雑用や家事をこなしていたらあっという間に夕方になってしまったので、少し早いが夕食の仕込みをすることにした。食べて寝てまた食べて……だと兄の身体に悪そうなので、ちょっと軽めの夕食にしておこう。
残っていた干し肉を切り刻み、野菜も食べやすい大きさに切って鍋に投入する。そしてそのままぐつぐつ煮込み、簡単な肉野菜スープを作った。ピピの分は別の大鍋に作っておいた。
時間も時間なので、もう一度兄の様子を確認しようと寝室を訪れる。
兄は未だに起きておらず、健やかな寝息を立てていた。
――兄上も、何だかんだで一度寝ると長いんだよなぁ……。
仮眠するとか言って昼頃ベッドに入り、そのまま翌日の朝までずーっと起きて来なくて心配したこともある。病気とか獣化の兆候とかでないならかまわないが、こんなに寝ていたら生活リズムがズレてしまいそうだ。
「兄上、もう夜だぞ。そろそろ起きないか?」
「…………」
「夕食も用意してあるんだ。せっかくだから温かいうちに食べないか?」
「……むにゃ」
何度か声をかけたが、起き出す気配はなかった。そんなに疲れが溜まっていたのか……。
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