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第1509話
「あら、そうですか。アクセルさんがそう言うなら、正々堂々戦いましょうね」
にこりと微笑んでくるコニー。
やや顔を引き攣らせながら、アクセルはそそくさとその場を立ち去った。そして急いで家に戻った。
――どうしよう……まるで勝てる気がしないんだが……。
勝ちを譲ってもらうわけにはいかないものの、だからといって今の状態のまま戦って勝てるとは思えない。やはりもっと回避率を上げるとか、狂戦士モードの継続時間を伸ばすとか、そういう訓練が必要だと思われる。
「はぁ……」
やっぱりあの洞窟に行かないといけないのかなぁ……あそこ苦手だし、丸一日潰れちゃうからなるべく行きたくないんだよなぁ……。
「おや、どうしたんだい? そんな落ち込んだ顔して」
帰ったら兄に心配された。
簡単に経緯を説明したところ、今度は呆れた顔をされた。
「お前、対戦相手の偵察行く度に落ち込んでない? 相変わらず変なところで自信がないねぇ」
「でもコニーの弓は本当にすごかったんだよ。特に早撃ちが凄まじい精度で……。ランゴバルト様が回避の練習にしているくらいだから、どんな感じか何となくわかるだろ?」
そう力説したのだが、兄はますます呆れた顔をしてこちらの頭をペシンと叩いてきた。いきなり叩かれたので何事かと思った。
「お前、仮にもヴァルハラに招かれた戦士なのに、上位ランカーに弓使いがいない理由もわからないのかい? 弓は一対一の戦いに向かないんだよ。接近戦にも弱いし」
「それは……わかってますが」
「コニーくんの早撃ちがどれだけすごいのか知らないけど、どんなにすごかろうが懐に飛び込まれたら何もできない。そしてお前の武器は接近戦に強い。要は、いつも通り戦えばいいんだよ。何も心配する必要ないね」
「…………」
兄に断言されても、薄っすらとした不安は拭えなかった。負けてはいけないというプレッシャーと、このままでは勝てないんじゃないかという考えが同時に襲ってきて、居てもたってもいられない気分だったのだ。
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