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第1513話
様々な悩みを頭で考えながら、アクセルはひたすら料理をこなした。半ば憂さ晴らしのように食材を切り刻んでいたら、いつの間にか大量の料理が完成していた。こんなに作ってどうするんだか……。
***
翌日。手早く身支度をしてアクセルたちは例の洞窟に向かった。
「ピピ、俺たちはこれから洞窟踏破に行ってくる。一回潜るのに丸一日かかるかもしれないから、食事は全部作っておいたからな。お腹が空いたら好きなものを食べてくれ」
と、作っておいた食事を小屋の前にドーンと置いてやる。
スープは冷めても美味しいさっぱり系の味付けにして、サンドイッチやパンケーキは好きな具と食べられるようにパンと具を分けておいた。
「ぴ……」
ピピはすんすんと匂いを嗅いでいたが、心なし不満げな顔をしていた。やはり出来立ての温かいご飯の方が好きなようだ。まあ当然か。
「なるべく早く帰ってくるから。……じゃあ、行ってくるよ」
家を出ていつもの山を歩き、山頂付近のやや開けた場所で一休みしてから、目的の洞窟の前に立った。
「……相変わらず入口小さいよな。ちょっと不便なんだが」
「自然にできたものだからね。手を加えていないからこそ、鍛錬に使えるんだよ」
と、兄は早速四つん這いになって入口から洞窟に入ってしまった。
「ほら、お前も早くおいで。時間がもったいない」
「あ、ああ……」
アクセルも急いで腰を低くして穴をくぐり、洞窟内に入った。
――う……相変わらず真っ暗だ……。
外の明かりはほとんど入って来ず、視覚はほぼ頼りにならない。情報の七、八割を視覚に頼っている人間にとっては、それだけで十分恐怖が芽生えてくる。元々出口の遠い狭い洞窟に入ってしまえばなおさらだ。
「兄上、どこだ……?」
早速少し怖くなってきて、前方に向かって手を伸ばす。
するとガシッと強めに手を握られ、安心させるようにぎゅっと抱き寄せられた。
「はいはい、お兄ちゃんはここだよ」
「……!」
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