1517 / 2208
第1517話
ぐすん、と鼻を啜り上げつつ、アクセルは呟くように聞いた。
「兄上……俺、本当に強くなれるかな……」
「? 何言ってるんだい? お前は確実に強くなっているじゃないか」
「でも、自分では全然実感が沸かなくて……。それどころか、ランクが上がれば上がるほど不安の方が大きくなっていくんだ……。強くなったならもっと自信がついてきてもいいはずなのに、自信がつくどころか常に『勝てないんじゃないか』ってネガティブな気持ちになってしまって……」
「そっか」
「……早く兄上みたいになりたいのに……兄上のように強くなりたいのに……俺、もうダメかもしれない……」
またポロリと涙がこぼれてきて、自分で頬を拭った。
こんな風にすぐに弱音を吐いてしまうところも、兄に頼ってばかりの自分にも、いい加減嫌気が差す。
兄はほとんどネガティブなことを言わないのに、何故自分はいつもこうなのだろう。情けなくて悔しくて、ままならない現実に絶望しそうだ。
「それもまた、お前が強くなった証拠だよ」
「えっ……?」
不意にそんなことを言われ、アクセルは顔を上げた。
前方の兄は暗闇に呑まれて見えず、声だけが確かに聞こえてくる。
「二流や三流の戦士はね、自分の実力を測ることすらできないから、一流の戦士を見て『頑張れば自分もあんな風になれるはず』って思っちゃうんだ。ところが一流の戦士ともなると自分の今の実力も客観的に計れるから、『今の状態じゃ勝てない』とか『まだまだ努力不足だ』とか考えちゃうの。不安が大きくなることは、逆に言えばそれだけ正確に自分の実力がわかるようになってきたってことなんだよね」
「そう……なのか……?」
「そうだよ。昔のお前は『頑張れば兄上みたいになれる』って闇雲に鍛錬してたけど、最近ようやく私との差に気付き始めた。それって実は大きな進歩なんだよ。お前自身は不安と戦っているかもしれないけど、その不安こそが強くなった何よりの証拠なんだ」
「…………」
ともだちにシェアしよう!