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第1519話

 家までの道中、どうしても気になっていたことを聞いてみる。 「あの……兄上って、俺とほぼ同時に洞窟から出てきたんだよな……?」 「いや? 三〇分前にはクリアしてたけど」 「えっ……? 嘘だ、そんな……」 「嘘じゃないって。『今日は何も起きないなー』と思いながらずーっと歩いてたら、いつの間にか踏破してたんだ。後ろからお前もついて来てると思ったけど、全然出てこないから何かあったのかと心配しちゃったよ」 「そ、そんな馬鹿な……。途中、俺に声をかけてくれたじゃないか」 「え、かけてないけど。お前だって黙々歩いていたじゃないか」 「……!?」  兄の回答に、くらりとめまいがしてきた。  こんなところで兄が嘘を言うとも思えないから、それが真実だとすると……。  ――じゃあ、途中で抱き締めてくれたのは……? あれは一体誰だったんだ……?  てっきり前を歩いている兄が励ましてくれたのだと思っていたが、実はそうではなかったのか? まさかあれも幻覚だったのか? 幻聴のみならず幻覚まで見てしまうなんて、一体どうなっているんだ……?  いや、でも仮にあれが幻覚だったとして、あれにはしっかり実体があった。泣いている自分を抱き締めてくれたし、優しく声をかけてくれて頭も撫でてくれた。  さすがにあれが全部幻覚だなんて思いたくない。 「どうしたんだい? 何か急に顔色悪くなってるけど……大丈夫?」 「あ、いや、その……俺、洞窟の中で兄上に抱き締めてもらって……」 「ええ? 私に? そんなことしてないけど……」 「してくれたんだよ……。不安で心が折れそうになってメソメソ泣いてたら、『大丈夫だよ』って……『この洞窟には実体のある幻は出てこないから私は本物だよ』って……確かにそう言ったんだ……」 「え……」 「だから俺、兄上が戻ってきて助けてくれたんだと思って、それで……」  そう言ったら、今度は兄の顔が険しくなった。  もともと白い肌がますます白くなり、眉間にシワが寄って深刻に俯き始める。

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