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第1522話

 その後は二人で家に戻り、外の露天風呂で全身の汚れを落とした。  ピピも一緒に洗ってあげたのだが、何度も念入りに洗ったら常備していたボディーソープがすっかり空になってしまった。また市場に買い出しに行かなければ。 「なんだピピ。作り置きの食事、ほとんど食べてなくないか?」  鍋や食器を回収しようとしたら、空っぽになっているのが一部の皿だけで少し驚いた。 「なんだろ、口に合わなかったのかな……。やっぱり作りたてじゃないと嫌なのか」 「ぴ……」 「まあそうか。冷めたスープやサンドイッチじゃ、あまり美味しくないのはわかる。これから食事の準備するよ、ちょっと待っててくれ」  とりあえず鍋と食器を家の中に運んで……とやっていると、じっと見ていたピピがたどたどしくこう言った。 「アクセル、すぐかえってきた。こんなにいっぱい、ごはんいらなかった」 「……えっ? そうなのか?」  うんうん、と頷くピピ。てっきり丸一日経ったのだと思い込んでいたが、実際は数時間しか経っていなかったようだ。  ――おかしいな……以前踏破した時はかなり時間かかったのに。  あの洞窟は不思議な出来事が発生するだけでなく、時間の進み方も外とは違うみたいだ。本当にわけがわからなさすぎて混乱する。  というか、そもそも自分の目的は「狂戦士モードの延長」だったはずだ。果たしてちゃんと達成できたんだろうか。泣きながら洞窟を歩いてきただけで、強くなれているとは思えないのだが……。 「はぁ……」  何の成果も得られていなさそう……と、心の中で落ち込みつつ、アクセルは黙々と食事の準備をした。  ピピが残した食材をカットし直し、鍋に投入して火を通す。何時間外に置いていたのか知らないけど、加熱すれば食べられるだろうという考えで、全ての食材をごちゃ混ぜにした野菜スープを作った。  兄は変な顔をしていたけれど、「残飯整理だ」と言い切ってそのまま夕食に出した。

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