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第1523話
そんな感じで平和に夜を過ごし、その日は当たり前にベッドに入った。
***
それから数日後。トーナメント第二死合い当日がやってきた。
「はぁ……なんか緊張する」
軽くストレッチをしつつ、どんよりと息を吐く。
相手はランゴバルトの付き人・コニー。弓矢の名手で、素早い射撃が得意な少年だ。ランクはアクセルより下だが、それだけでは計れない実力を持っているのは確かである。
「まーたお前はネガティブなこと言ってるね。そんな緊張しなくても、火事場の馬鹿力で何とかなるって」
「……ぐえっ!」
開脚している時に背中を後ろから押され、思わず潰れたような声が漏れた。
今日は兄も観に来てくれる。トーナメントの優勝を目指すためにも、ここで負けるわけにはいかない。
が、自信があるかと問われたら、「NO」と答えてしまう気がする。これはどの死合いでも同じだった。
――死合いって、初見殺しみたいな危うさがあるんだよな……。
念入りに調査や対策をしても、実際に戦ってからでないとわからないことはたくさんある。初めて見る技に虚を突かれたり、その一瞬の隙に攻められて致命傷を負うことだってあり得るのだ。
兄のように実力がある人ならいざしらず、自分はまだまだ発展途上。相手によっては手も足も出ない可能性も否定できない。
特に今回のコニーは、アクセルにとってあまり相性がいいとは言えなかった。
弓矢は懐に入ってしまえば何もできないと言うけれど、そんなことはコニー側もわかっている。懐に入られた時の対策だって、当然考えてきているはず。
ではどうするか……と聞かれたら、今のところ有効な策は思いついていない。
距離を取れば向こうから狙撃される、懐に入っても何らかの反撃を食らう。そんな状況でどう活路を見出せというのか。
「……兄上、何かアドバイスしてくれ」
ほとんどダメ元で尋ねたら、兄は背中を押しながらこんなことを言った。
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