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第1529話※(フレイン視点)
目玉に突き刺さった矢も抜いてやったら、一緒に眼球も飛び出してきて「ありゃ」と肩をすくめた。
もちろん棺に入れれば完全復活するけれど、可愛い弟の目玉を引き抜いてしまうのはなんだかちょっと胸が痛む。
――というか、死後数分しか経ってないのに、かなりガッチガチに硬まってるなぁ……。
死ぬ直前まで激しく動き回っていた人は、死後硬直がものすごく早くなる。立ったまま死ぬという現象も、理論上は十分あり得るのだ。
逆に言えば、それだけ必死に戦っていたということでもある。
死ぬことを恐れずに積極的に突っ込んでいったからこそ、勝利をもぎ取ることができたのだ。
「ホント、よく頑張ったね。お兄ちゃんは誇らしいよ」
全ての矢を抜き終え、よいしょ……と弟を持ち上げる。
本当はちゃんと背負ってあげたかったが、既に丸太のように硬くなっていたので仕方なく脇に抱えることにした。
「よう、フレイン。今日は弟くんの死合い見逃さなかったんだな」
スタジアムを出てオーディンの館に歩いていく途中、ジークに声をかけられた。
「にしても弟くん、相変わらずボロボロになってんな。一体どんな戦い方をしたんだか」
「相手が弓兵だったからね、捨て身で突っ込むしかなかったんだよ。これが同じ刀相手だったら、もう少し上手い立ち回りができたと思うんだけど」
「ふーん? まあ何にせよ、勝ててよかったじゃねぇか。これでお前さんとの死合いにまた一歩近づいたか」
「そうだね。トーナメント優勝は大変だと思うけど、できるだけ頑張って欲しいよ」
オーディンの館に辿り着き、大きめの棺の中に弟を寝かせる。そして優しく髪を撫で、こう囁いた。
「おやすみ、アクセル。今はゆっくり休んでね」
重い蓋を閉め、館を立ち去る。ジークを素通りし、そのまま家に直行した。
いつもならジークに「一緒に夕飯食べない?」と声をかけていただろうが、何となく今日は誘おうという気にならなかった。
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