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第1530話(フレイン視点)
代わりに庭にいるピピに声をかけ、弟の武勇を自慢げに話して聞かせる。
「……でね、最終的にアクセルったら立ったまま死んじゃって。見た目によらず派手というか、見栄えのする死合いをしてくれるよね、あの子。本人は一生懸命なんだろうけど、見てるこっちはすごく楽しいというか」
「ぴー」
ふーん、とおとなしく話を聞いてくれるピピ。
神獣のうさぎは戦士 の死合いなんて興味ないだろうけど、鉢植えの植物みたいに反論を気にせず喋れる相手は貴重である。
一通り死合いの感想を話したところで、何気なくフレインはピピの足元を見た。もふもふの前足から、ちょっとだけ尖った爪先が覗いている。
「そういやピピちゃん、最近爪切ってなくない? 結構伸びてるでしょ」
「……ぴ?」
「せっかくだから切ってあげるよ。じっとしててね」
「ぴぇ!?」
サッと小刀を抜き放ったら、ピピはあからさまにビビり始めた。そして小屋から飛び出し、ダッシュでこちらと距離を取り始めた。
ピピはもともと爪切りが苦手だが、フレインがやろうとするとすぐに逃げてしまう。
弟が相手なら我慢しつつもおとなしくしてくれるのに、なんで自分の場合は逃げてしまうのだろう。
「大丈夫だよ、ピピちゃん。私、刃物の扱いは得意だからね。絶対失敗しないから怖がらなくていいんだよ」
「ぴー! ぴー!」
「ああ、逃げないで。本当に大丈夫だから。前足を切るようなミスなんてしないから」
「ぴえぇぇ……!」
いくら言っても、ピピは逃げ回ってばかりで近寄って来ない。
うさぎの脚には敵わないので、フレインも諦めて小刀をしまった。
「そんなに嫌なの? しょうがないなぁ……。じゃあアクセルが帰ってきたらやってもらいなさいね? あまりに爪が伸びてると、走ってる時に折れちゃうし」
「ぴ……」
「さて、そろそろご飯にしようかな。ピピちゃんはいつも通り、野菜スープでいいよね」
一度家に戻り、キッチンの食料棚を調べる。最近買い出しをしていなかったせいか、ジャガイモが数個と小さめのニンジン、干し肉数切れしか残っていなかった。
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