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第1533話
「あ、アクセル。やっと復活したんだね。おはよう」
棺係をしていたチェイニーに声をかけられる。彼は閉じている棺をチェックし、蘇生完了した棺の蓋を開けて起床を促していた。多分、アクセルの棺を開けてくれたのもチェイニーだろう。
「おはよう。チェイニーも、朝早くから仕事ご苦労だな」
「ああ、これね。実は今日夜勤なんだよ。このチェックが終わったら帰って寝るんだ」
「え、そうなのか? 一晩中仕事なんて、本当にご苦労様だな……」
「アクセルだって、死合い頑張ってたじゃん。矢の雨が降り注ぐ中戦って、最後は立ったまま死んでたよね? あれはすごかったな」
「ああ……やっぱり俺、立ったまま死んだのか。なんか倒れた感覚がなくて、そのまま意識がなくなっちゃったんだよな。コニーを斬ったところまでは何となく覚えてるんだが」
「そうなんだ? でも安心して。アクセル、ちゃんと死合いには勝ったからさ。次はいよいよ三回戦だぜー。めでたいね」
「あ、そうなのか」
自分の耳にはヴァルキリーの声が届いていなかったから、死合い結果を知れてよかった。どうにか勝ち上がれたようで、ひとまず安心だ。
「おや、お友達とお話中だったか」
「えっ……?」
立ち話をしているところに、兄がやってきた。血の汚れ等がどこにもなかったので、迎えに来てくれたのだとわかった。
嬉しくなって近づこうとしたのだが、
「……ま、いいや。ちゃんと復活してるなら安心した。私は先に帰ってるね」
「えっ……!?」
すぐにくるりと向きを変え、その場を立ち去ってしまう。
「ちょ、兄上!? 待ってくれよ!」
「え、別にいいじゃん。家に帰ればフレイン様いるんだし。いつでも話せるっしょ?」
急いで追いかけようとしたら、チェイニーに苦言を呈された。多分、実兄にそこまで気を遣う理由がよくわからないのだろう。
「そういうわけにはいかないんだよ。兄上が臍曲げると後が怖いんだ」
「……そんなもんかね?」
「とにかく、俺は帰るよ。チェイニーもお疲れ様!」
そう言い捨てて、アクセルはダッシュで兄を追いかけた。
背後でチェイニーが、
「やっぱり、どう頑張ってもフレイン様が一番なんだなー……」
と呟いていたが、アクセルには聞こえなかった。
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