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第1535話

 誰がやろうが、苦手なものは苦手なようだ。  後でご褒美のパンケーキでも作ってやろう……と思いつつ、ピピ用の爪切りを持ってくる。そして手早く爪を切ってやった。  パチン、と爪を切る度にピピがびくっと震え、怯えて逃げようとするので何度も宥める羽目になった。おとなしくしていてくれれば五分くらいで全て切り終わるのだが、何だかんだでその倍はかかってしまった。  その後、溜まっている家事を片付けようかなと家に戻ったら、キッチンに大量のカレーが作り置きしてあるのを見つけた。寸胴の大鍋で、まだ半分以上は残っている。 「うわぁ……すごい量だな。何でこんなにたくさん作ったんだ?」 「あ、それ? 昨日、無心で材料を切り刻んでいたらつい作りすぎちゃったんだよね。ずっと普通のカレーってのも飽きるから、お前イイ感じにアレンジして使い切ってくれない?」 「あ、ああ……それは構わないが……」  そう答えつつ、ある疑惑が頭をよぎる。  一人前にはあまりに多すぎるこのカレーは、誰かと食べるために作ったんじゃないか。また自分がいない間に勝手に家に誰かを呼んで、浮気をしていたんじゃないか。  だとしたら、また咎めないといけない。  ――でも、復活して早々喧嘩するのもなんか嫌だな……。  何と言って話を切り出そうか考えていると、 「してないよ、浮気は」 「……えっ?」 「昨日は誰も家に呼んでない。どこかに出掛けてもいないし、ずっと家に一人だった。本当だよ? 何ならピピちゃんに聞いてごらん」 「あ……そ、そうなんだ……? じゃあ本当に、ただいっぱい作りすぎただけ……?」 「だからそうだってば。お前、私のこと何だと思ってるの?」 「えっ!? あ、いや……何でもないです、すいません」  慌てて平謝りし、アクセルはごまかすように言った。 「ええと、じゃあちょっとシャワーでもしてこようかな……。ついでに衣装も洗濯してくるよ」  逃げるように脱衣所に駆け込み、服を洗濯カゴに放り込んで浴室に入る。

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