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第1536話
シャワーコックを捻り、頭から熱いお湯を浴びて気分をさっぱりさせた。
――兄上、ちょっとイラッとしてた……よな?
何もしていないのに疑ってしまったのは、申し訳なく思う。
とはいえ前科持ちである以上、浮気を疑われるのは仕方ないんじゃないか。
何度も同じようなシチュエーションで浮気されてきたのだから、またやらかしたのかと考えてしまうのは自然なことだ。俺は悪くないよな……うん。
そう思って開き直っていると、急に浴室のドアが開いて兄が入ってきた。
当たり前のように全裸になっていて、タオルの他に怪しい道具も複数所持している。
「あ、兄上!? 何で入ってくるんだ!? というか、その道具はなんだ!?」
「ああ、なんか今日はこういう気分で。ちょっとイラッとしたから、お仕置きしちゃおうかなと」
「ええ!? そんなこと言われても……、兄上だって浮気したことあるんだから、疑われるのは仕方ないん……うっ!」
そう言いかけたら、兄に手で口を塞がれて風呂の壁に押さえ込まれた。
思った以上に目が据わっていて、今更ながら「地雷を踏んでしまった」ことに気付く。
「ああ、またちょっとイラッとした。お前、私が寂しがり屋だって知ってるよね? そんな私が一晩中一人でいたんだよ? 寂しいのを我慢してお前を待ってたのに、お前はまず先に浮気を疑うわけか」
「う……」
「私はいつだってお前一筋で、お前優先で行動してるんだけどねぇ……? そりゃ前科はあるけど、お前が『浮気だ!』って怒るようなことは極力しないように心掛けているのに。なのに疑われるとか、ホント悲しい……」
「っ……ご、ごめん兄上、そんなつもりじゃ……むぐっ!」
手が離れた隙に弁明しようと思ったのに、すぐさま口にタオルを噛まされ、何も喋れなくなってしまう。
続いて両手を後ろに回され、カチッと手錠を嵌められてしまった。
「っ……!?」
口も利けず、両手の自由も奪われて、ぞっと血の気が引いてくる。肩越しに見た兄の表情はよくも悪くも真顔で、本気でこちらをお仕置きしようという意思が透けて見えた。
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