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第1541話*

「いや、それはそのままにしとこう。最後の最後、気が向いたら外してあげる」 「はあっ!? なんでだよ! 俺、両手使えないの嫌なんだけど!」 「だってお前、気持ちよくなるとすぐ暴れるんだもん。脚もばたつかせるから蹴られそうになるし、一生懸命上から押さえても魚みたいにびちびち跳ねるし」 「それは……」 「そんな状態で腕まで自由にしたら殴られちゃうじゃない。いくらお兄ちゃんでも、普段から鍛錬してる戦士に不意打ちで殴られたら痛いよ。だからお前は、しばらく両腕禁止。いいね?」 「そ、そんな……! お願いだ兄上、俺暴れないように気をつけるか……ああっ!」  こちらを黙らせるように兄が腰を動かしてきて、甲高い悲鳴が迸る。  暴れないようにすると言った側からびくんと大きく身体が跳ね、反射的に両脚も跳ね上がった。  全身が勝手に痙攣し、震えが止まらなくなる。 「あっ、あっ、ああっ、あん!」 「ほら、今もびちびち跳ねまくってる。これ押さえるの大変なんだよ。活きがいいのは楽しいけど、その分こっちも体力をいっぱい使うんだ。だからもっと上手く楽しむ方法はないかなぁと考えた結果、拘束するのが一番手っ取り早いってことに気付いた」 「そ、な……はあぁっ!」  しれっととんでもないことを言う兄に、アクセルは内心引いた。  まるで暴れるこちらが悪いみたいな言い方をしているけれど、アクセルが暴れるのは兄が強烈な刺激を与えてくるせいである。  もっと穏やかでゆっくりした刺激ならそこまで暴れることはないだろうに、自分で仕掛けておいて「押さえるのが大変」とか言うのは反則ではないか。  ――ああもう……兄上、理不尽すぎる……!  泣きながら兄を見上げたら、兄は至極楽しそうにこちらを見下ろしていた。鋭い犬歯を剥き出しにし、完全に「男」の顔になってやりたい放題嬲ってくる。  まるで獲物の反応を楽しんでいる肉食獣みたいだ。  そんな様子を見たら何故かきゅうんと胸が高鳴ってしまい、意図せず後ろを締めてしまった。

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