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第1555話

「わかった、じゃあ今度チェイニーの死合いを見に行ってくるよ。仮に戦うことになるのなら、偵察にもなるし」 「いいけど、また帰ってきて落ち込むんじゃないよ? お前、誰かを偵察に行った後はいつも凹んで帰ってくるんだから」 「そ、そんなことは……」  ない、とは言い切れなかった。  毎回死合いの前に相手の調査をするものの、相手の技量に圧倒されて「俺じゃ勝てない」と落ち込むのが常だった。  その度に兄に「大丈夫だってば」と慰められ、開き直って戦った結果、たまたま勝てたという事案が続いている。 「というかねぇ……お前、こんなにランク上がったのに未だに自信ないってどういうことなの? そろそろ『まあ何とかなるだろう』ってならない?」  兄に呆れた目を向けられたので、アクセルは言い訳するように答えた。 「しょうがないだろ! なんか知らないけど不安になっちゃうんだよ。『俺ができることは相手もできるはずだ』とか、『俺の知らないテクニックを使われたら負ける』とか考えちゃって……」 「はあ、心配性だねぇ……。謙虚と言えば聞こえはいいけど、そこまで不安になっちゃうのはただのビビリと言えなくもない」 「ビビ……!? そんな、俺は……」 「ああでも、本物のビビリだったらよくわからない道に踏み込んで罠にかかったりしないか。ということは、お前はただ自分の実力を過小評価してるだけになる。自分の力を正しく認識できないのはよくないね」 「う……すみません……」  ずーん……と肩を落とす。  自分に自信がないのは昔からずっとそうなので、今から治そうと思っても難しい。  ランクは上がってきたものの、やっぱり内面の考え方は簡単には変えられないので、仮にトップ七位入りしたとしても「もしかしたら勝てないかもしれない」とつい考えてしまうことだろう。  もっと兄みたいに、おおらかに構えていられればいいのだが……。

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