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第1556話
「そういうネガティブな思考は、心掛けひとつで少しずつ改善していくよ? 悪いことを考えそうになったら『いや、大丈夫に決まってる』と声に出してみるとか、わざと明るいことを考えてみるとか。それをやるだけでだいぶ違ってくると思うね」
「そ、そうか……。じゃあ今度は偵察しても落ち込まないようにするよ。落ち込んでても落ち込んでないフリをする。それならいいだろ?」
「……まあ、最初はフリでもいいか。そうやってフリを続けていくにつれて、本当に思考が引っ張られることもあるからね。少しでも改善しようとするのはいいことだよ」
マグカップに口をつけつつ、兄が続けた。
「というかね、高ランクの戦士があまりに自信なさげな振る舞いをしてるのもよくないんだよ。下位ランカーは強い上位ランカーに憧れるのであって、『本当に大丈夫かな』ってビビっている上位ランカーなんて見たくない。下手すると『たいしたことないヤツ』って侮られてしまうよ。そういうのは無用なトラブルを招く。だからある程度は、自信を出していた方がいいんだ」
「そ、そうなのか……」
「そうだよ。ランゴバルトを見てみなって。彼なんか一〇〇パーセント自信満々で、つけ入る隙なんてないでしょ。下位ランカーでランゴバルトを舐めているヤツは一人もいない。つまりそういうことなのさ」
「はあ」
ランゴバルトはかなり極端な例だと思うが、兄の言いたいことはわからんでもない。
「お前はただでさえお人好しで舐められやすいんだから、ランクが上がっても気をつけないとダメだよ? 変なヤツらが寄ってくるのも、お前がそういう雰囲気を出しているからだ。ランクが上がったからって油断しないように。演技でも、『俺は自信に満ち満ちてます』って雰囲気を出しておくんだよ。そうすりゃ変なヤツも近寄って来ないし、いずれ本当に自信も湧いてくる」
「そんなものなのかな……」
「そんなものなの! とにかく気をつけなさい。わかった?」
「は、はい……」
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