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第1558話
「ただいまー」
そんなことをしているうちに、兄が帰ってきた。
食材を大量に買い込んできており、買い物バッグからネギや大根がはみ出していた。
「おかえり……またいっぱい買ってきたな」
「いやぁ、市場って美味しそうなものがいっぱいあるからさ。つい買いすぎちゃったよ。でもどうせ全部食べるからいいよね」
……そんなことをしているから、うちのエンゲル係数が高くなってしまうのだ。
まだカレーも全部処理できてないのに……と内心呆れていると、兄が一本の小さなビンを取り出した。褐色のビンで、ラベル等は特についていない。
「はい、これ。いつも頑張っているお前にお土産だよ」
「? なんだこれ?」
「元気が出る栄養ドリンクなんだってさ。市場で売ってたから買ってきた。なかなか出回らない珍しい品らしいよ」
「ふーん……?」
「トレーニングの後にでも飲んでみたら? 私は飲んだことないから、味は知らないけどね」
それを聞いたら、ちょっと顔が引き攣った。
こういう「元気が出る~」みたいに謳っている飲み物は、ものすごく苦かったり激マズだったりするのだ。せっかく買ってきてくれたから一応飲んではみるけれど、あまりにひどい味だったら途中でリタイアしてしまうかもしれない。
――美味しさは期待しないから、せめて飲める味でありますように……。
気を取り直し、アクセルは夕食まで身体を動かした。
チェイニーがどんな戦い方をするのか知らないが、自分の同期なんだから油断はできない。しっかり鍛錬しておかなくては。
そうして鍛錬を続け、陽が傾きかけてきたところでクールダウンのストレッチを行った。
そして家に戻り、兄が買ってきてくれた栄養ドリンクを恐る恐る飲んでみた。
――あれ?
小さく一口飲んでみたが、思ったより不味くない。むしろハチミツみたいな味がして結構美味しい。
「どう? それ」
兄が感想を尋ねてくる。アクセルは一気にドリンクを飲み干し、言った。
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