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第1568話

 アクセルは削りかけの丸太を置いて立ち上がった。 「それより、早くこれ外してくれないか? 生活しにくくてしょうがない」 「ありゃ、そんなにキツかった? 痛くならないように着けたつもりだったんだけど」 「痛くはないけど、違和感が凄いんだよ」  そう文句を言ったら、兄は何故かニヤリと笑ってきた。 「へえ、そう? それは困っちゃうね、じゃあ早く外してあげよう」  ズボンを下ろされ、後ろを向かされ、背中側の鍵をカチッと外される。  貞操帯を外された途端、解放感と共にむわっと性的な匂いが立ち上ってきた。 「っ……」  普通に生活していたはずなのに、なんだこの匂いは。貞操帯を着けていただけでこんな風になるものなのか? いや、いくら何でもこれは……。 「留守番中にいやらしいことでも考えてたの?」 「そっ……!」 「貞操帯着けてると、ついそういう気分になりがちだよね。でもある意味当たり前のことだから、お前は悪くないよ。お兄ちゃんが解消してあげるから、安心して」 「えっ!? ち、違う……! 別に俺はそんな……あっ!」  ひょいと身体を抱き上げられ、近くのロングソファーに放り投げられ、上からのしかかられてしまう。  ちなみにベランダにいたピピは、「また始まったよ……」とすたこらさっさと自分の小屋に戻ってしまった(こういう時のピピは基本的に無関心である)。  うやむやにされるのが何だかシャクで、アクセルは必死に兄を押し返した。 「待ってくれ兄上! 俺は別にやりたかったわけじゃ……!」 「そう? 私はやってみたいな。こんなお前を見られるの、最初で最後かもしれないし」 「それは……」 「きっと明日にはいつものお前に戻ってると思う。だからその前に味わっておきたいんだ。私の知らない若かった頃のお前を」 「っ……」  そんな風に言われたら、こちらも断りづらい。  アクセル自身も――若返ってしまったのは不本意だけれど――生前に兄と抱き合えたらどんな気分だったか、体験してみたい気持ちはある。

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