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第1582話

「それにホラ、トーナメントでオレが勝ったらアクセルとデートできる約束だし。それじゃオレも頑張らざるを得ないよね」 「え? あ……う、うん……そうだったな……」  忘れかけていたが、言われて思い出した。そういやそんな約束もしていたな……。  ――やばい……ますます負けるわけにはいかなくなった……。  デートが嫌なわけではない。どうせ二人で遊びに行くだけだから、言うほどたいしたことではないだろう。  問題は、兄が勘違いしてヤキモチを焼いてくることだ。  表面上は「気にしてないよ」などと言ってくる兄だが、内心は複雑な思いを抱えているに決まっている。たった一晩、弟が棺に入っているだけで浮気してしまうような兄だ、我慢できるはずがない。  そうなると、「じゃあ私もデートしてこよう」なんて言い出し、友人たちと一晩過ごすことも十分考えられる。特にジークは元カレだから、アクセルにとってはあまり油断できない相手だ。事実、浮気されたことも一度や二度ではない。  ――それだけは絶対嫌だ……!  兄の浮気シーンが頭にちらつき、強制的に首を振って追い出す。  アクセルは真っ直ぐチェイニーを見て、言った。 「チェイニー……次の死合い、俺絶対勝つから。きみがどんな手を使ってこようが、負けるつもりはないから。よろしくな」 「あ、そう? 随分気合い入ってるね。それってつまり、オレとはデートしたくないってこと?」 「いや、兄上が浮気しちゃうかもと思って。俺がチェイニーと遊びに行ったら、『じゃあ私も』って言いかねないんでな。そういうのはモヤるから、勝ちたいだけだ」 「ふーん? 別に友達と遊びに行くくらい、いいと思うけどね」 「兄上の場合は元カレが含まれるからダメだ。その辺はあまり信用してない」  ズバッと言い切ったら、チェイニーは複雑な顔で苦笑してきた。何故そんな顔をするのか、アクセルにはわからなかった。

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