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第1585話
そうなってくると、こちらの勝ち筋は先手必勝で致命傷を負わせることのみになり、死合いが長引けば長引くほど不利になっていく。
でもチェイニーも当然そんなことわかっているだろうから、遅延行為を仕掛けてくる可能性も十分あり得る。一体どうすればいいんだ……。
「お前、また始まる前から悩んでるでしょう」
兄が呆れたようにこちらの顔を覗き込んでくる。
「お前はかなり強くなったし、大抵の戦いには対応できるくらいにはなったのに、未だに自信がないっておかしな子だねぇ? なんでそんなに悩んじゃうの?」
「初めて戦う相手なんだから、いろいろ不安になるものだろ……。ましてや暗器使いなんてどう戦えばいいかわからないし」
「だからそこは臨機応変になんとかするんだよ。お前はもう、それができるくらいには強くなったんだ。確かにチェイニーくんが何して来るかはわからないけど、どうせ下調べしたって『こんなんじゃ勝てない』って落ち込んじゃうでしょ? だったらいっそのこと、『何とかなるだろう』って開き直っちゃえばいいんだよ」
「……まあそうだな。初見の恐ろしさはあるが、勝つためには何とかするしかないんだもんな……」
そう言われても、あまり気分は晴れなかった。
――いい加減、もう少し自信がつかないものだろうか……。
毎回兄に励ましてもらうのも、だいぶ情けない気がする。
いや、いざ死合いに突入したら死に物狂いで戦うのだが……それにしても、事前のネガティブが治らないのは何とかならないものか。もっと兄みたいに堂々と過ごしたい。
「というか、どーしても不安だったら死合い中に相手の衣装を切り裂いちゃえばいいんじゃないかな?」
「……は? どういう意味だ?」
「だって極端な話、裸にしちゃえば武器を隠すもクソもないじゃない。暗器使いは確かに身体の至るところに武器を隠してるけど、隠せるのはあくまで衣装でカバーしてるからでしょ。最初から全裸にしちゃえば隠しようがないじゃない」
「ええと……それは、確かにそうだな……?」
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