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第1586話

 ほぼ全裸のチェイニーを想像し、あまりにシュールな光景に笑いそうになる。  ――まあ、全裸にできるくらいなら苦労せずに勝てる気がするけど。  それでも、いざという時の勝ち筋が見えてきたのは大きい。  考えてみれば、暗器使いが武器を隠している場所なんてせいぜい袖口や足元、胴回りくらいだろう。そこを重点的に狙ってしまえば、死合いも有利に進められる気がする。 「……ありがとう、兄上。何とか勝てるように頑張るよ」 「うんうん、頑張って。無事に勝てたらお兄ちゃんがご褒美あげるからね」  ご褒美、と聞いて思わずドキッとした。  兄のことだから、どうせ勝利を口実にいかがわしい行為を仕掛けてくるつもりなのだろう。わかってはいるけれど、それがご褒美になるのかは甚だ疑問である。  まあ今更だけどな……と思いつつ、アクセルは兄に聞いた。 「ところで、今日の夕飯は何にする? 材料はあるから好きなものをリクエストしてくれていいぞ」 「ほんと? じゃあお肉たっぷりのグラタンがいいな。マカロニもいっぱい入れてね」 「わかったよ、今から作るからちょっと待っててくれ。その間に風呂でも沸かしておいてくれると助かる」  そう言いつつ、早速調理に入る。  ホワイトソースを作るのが若干面倒だったが、小麦粉とバター、牛乳を丁寧に混ぜ合わせてダマにならないよう一から作ってやった。  次に鶏肉や玉ねぎ、椎茸を切り、マカロニもたっぷり茹でてグラタンの具材を用意する。  耐熱容器に具材を入れ、上からホワイトソースをかけてピザ用チーズをたくさん振りかけたら、あとはオーブンで焼くだけだ。  焼いている間に使った道具を洗って片付けていると、兄が風呂から戻ってきた。  交代で風呂に入り、上がった頃にはキッチンから香ばしい匂いが漂っていた。 「ふふ、美味しそうに焼けたねぇ。早速いただこうか」  熱々のグラタン皿をテーブルの中央に置き、ピピの分も取り分けてやって、三人で夕食をとった。  相変わらず兄は食欲旺盛で、グラタンの七割以上を一人で食べてしまった。

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