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第1587話
翌日、アクセルは兄からもらった玉鋼と一緒に武器を鍛冶屋に持って行った。
街外れにある鍛冶屋は、エルフたちが交代制で勤務しており、行く度に担当エルフが異なっている。
皆それぞれ腕前も違っていて、「このエルフはこの武器が得意」みたいな違いもあった。中には「非常にギャンブル性が高いが、成功すればとんでもなく魔改造された武器に仕上げてくれる」というエルフもいる。
アクセルの武器は一般的な小太刀なのでそこまで特殊なエルフは必要ないが、それでも剣の錬成が苦手なエルフに当たるとせっかくの玉鋼が無駄になってしまうこともある。
さて、今日はどんなエルフがいるだろうか……。
「ごめんください」
アクセルが鍛冶場に足を踏み入れると、そこでは一人のエルフが黙々とトンカチを叩いていた。カンカン、というリズミカルな音が心地よい。
「あの、すみません」
声をかけてみたが、エルフは振り向かない。まるで聞こえていないのか、熱心にカンカン、とトンカチを打ち付けていた。一体何を錬成しているのやら。
「あの、すみません!」
後ろから近づき、大きめの声で話しかける。
それでも全然気づいてくれなくて、さすがにちょっと戸惑った。
――え、これで気づかないなんてある? どんだけ集中してるんだ……?
手元を覗き込んだら、叩いていたのはごく普通の剣のようだった。
とりあえず剣が苦手なエルフではなかったので、その点はホッとする。
しかし気づいてもらえないと話が進まないので、アクセルは彼の耳元で声をかけた。
「すみません、ちょっといいですか?」
「はぅあッ!?」
奇妙な悲鳴を上げ、ようやくエルフは振り返った。見た目は若そうだったが、エルフだから見た目よりずっと歳がいっていると思われる。
「な、何だよあんた!? 急に話しかけないでくれたまえ」
「すみません、さっきから何度も話しかけたんですが全然気づいてくれなかったので」
「だったら肩でも叩けばよかっただろ。エルフはあんたらより耳がいいんだ。耳元で話しかけられたら鼓膜が破れちまう」
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