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第1594話
「オレも長年ここのシフト入ってるけど、今までそれ持ってきたヤツは見たことないね」
……ということは、余程手に入れるのが難しいということだ。
――そんなの、今からじゃ絶対手に入らなさそうなんだが……。
もう諦めるしかないかな……と思っていると、
「でもあんた、女神の涙持ってるじゃん」
エルフがこちらの胸元を指差した。
何のことかと思って、アクセルは視線を胸元に落とした。
「え、これ……ですか?」
エルフが指していたのは、兄からもらった青い石のペンダントだった。
ガラの悪い男たちに襲われて兄に助けられた時、「お前は危なっかしいからお守り代わりに持っていなさい」と渡されたのだ。
常に肌身離さず身に着けていたので、存在を意識することもなかった。
まさかこれが「女神の涙」とかいう素材だったとは……。
「それがあれば『属性抵抗』は付与できるぜ? 量は少ないけど、錬成素材としては十分だ」
「そ、そうですか……」
「んじゃ、そのペンダントと玉鋼、あと強化したい武器を預かるよ。一日ありゃ強化できると思うんで、また明日来てくれ」
「ちょ、ちょっと待ってください」
勝手に話を進められてしまい、アクセルは慌てて制止した。
「あん? まだ何かあるのか?」
「ええと、その……これは兄にもらった大事なものなので、そう簡単に素材にできるわけでは……」
「……なんだそれ。じゃあ結局強化はしないってことでいいか?」
「しないというか、保留で……」
「また保留かよ。あんた結構優柔不断なんだな。決める時はバシッと決めないと、結局何もできないで終わっちまうぜ?」
「……すみません……」
「ま、いいや。やらないっていうなら好きにしな。オレは仕事に戻るぜ」
再びカンカンとハンマーを叩きつけ始めるエルフ。
仕方なくアクセルは、またもや何の収穫もなしで家に戻った。なんだか無駄に往復してしまったみたいで、余計に疲れた。
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