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第1596話
勝利に必要なことだというのはわかっているけれど、そのために大事なお守りを消費してしまうのはどうしても受け入れられなかった。
「……嫌だよ」
「ええ?」
「俺にとってこのペンダントは、初めて兄上にもらった大切なものなんだ。当たり前に身に着けてるから普段はあまり意識しないけど、なくなったらなくなったで寂しいんだよ」
「あれ、そうなの? そこまで思い入れがあったんだ……?」
「当たり前だろ。今まで何だと思ってたんだよ」
「ああ、いや……ごめんね。大事にしてくれていたのは嬉しいよ、うん」
兄はやや呆気にとられているみたいだった。
まったく……この俺が、兄からもらったプレゼントをぞんざいに扱うわけないじゃないか。失礼な。
畳み掛けるように、アクセルは更に言った。
「だから、いくら死合いのためでもお守りを消費するのは嫌なんだ。本当に強化したいなら、何か別の方法を考えたい。さすがに今から素材を集めるのは無理だから、それ以外の方法があればいいなと思ってるんだが……」
「……なるほど」
兄は小さく微笑んでから、こんなことを言い出した。
「でも私は、例えそのお守りを素材にしたとしても、武器にお守りの力が移るだけだと思うよ」
「え?」
「今までは首から下げていたお守りが、お前の武器に形を変えるだけ。お前の武器がお守りそのものになるだけ。そう考えれば、失うことにはならないんじゃないかな」
「ええと、それは……」
「もちろんそこは、お前の考え方次第だけど。でも私としては、ペンダント状態よりお前の武器として役に立ってもらった方が嬉しいな」
「…………」
そう言われて、少し考え直した。
――まあ、兄上の言うことも一理あるか……。
形にこだわる必要はない。ペンダントだろうが小太刀だろうが、兄がくれたお守りはずっと自分の側にある。
武器強化は兄の意向にも添っているし、アクセルさえ容認できれば錬成してもらうのが一番手っ取り早いのだ。
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