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第1598話
「まあね。でもよくよく考えたらお前、公式死合いで負けたことほとんどなくない? 最初の私との死合い以外は、ほぼずっと勝ってるよね?」
「ええと……そう、だったかな……?」
勝ったと言ってもギリギリで辛勝したり、ヴァルキリーのアナウンスが聞こえる前に力尽きたことも多かったから、実力で勝利した感じがしないのだ。どちらかというと「運よく負けなかった」という感覚の方が強いかもしれない。
「そういう運の強さも実力のうちだよ。とにかく、次の死合いも頑張って。お兄ちゃん応援してるからね」
「ああ、もちろん」
というか、負けたらチェイニーとデートするという約束なのだ。兄の浮気阻止という意味でも、絶対に負けられない。
死合いまでの数日間、アクセルはいつもよりみっちり鍛錬を行った。
***
そして死合い当日。
アクセルはいつもより早起きして武器の様子を確かめた。
――特に変わったところはない、よな……。
強化をお願いした次の日に武器を引き取りに行ったのだが、見た目は何も変わっていなかったので少し面食らったのだ。切れ味は上がっているようだったが、それ以外の部分に変化がなかったので、本当に属性抵抗は付与されたのか不安ですらあった。
「そりゃあ、属性抵抗なんて見た目が変わらないのは当たり前だろ」
と、あのエルフが言っていた。
「『炎属性』とか『雷属性』みたいな、わかりやすい効果じゃないんだ。相手が何か仕掛けてこないと効果を感じられないのは当然だ。でも、失敗してるわけじゃないから間違ってもクレーム入れてくれるなよ」
「は、はい……わかりました」
「それと『属性抵抗付与』のいいところは、狂戦士モードじゃなくても常に発動し続けていることだ。そこは無条件のお守りと一緒だな。罠にもかかりづらくなるから、あんたにとってはいいことずくめだろうよ」
そうからかわれたが、どこまで信じていいかは未だによくわからない。
家に持ち帰って何度か素振りをしてみたけれど、切れ味以外の効果は感じなかった。まあ、そんなものだと言われたらそれまでだが……。
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