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第1602話

 ――大丈夫だ。いくらチェイニーでも気配はある……。  存在が消えたわけではないのだ。目には見えなくても動けば必ず音がするし、武器を向けられれば殺気も感じる。  それを頼りに居場所を探れば、なんとか……。 「それは無理じゃないかな? お前、いくら頑張っても強くならないんだもの」 「……!?」  突然耳元で兄の声が聞こえて、ぎょっとして振り返った。  目を凝らして周囲を探ったが、やはりそこは何もない草原のままだった。  ――そうだよな、こんなの幻聴に決まってる……。  惑わされるな。こんなところに兄がいるはずがないだろう。兄はボックス席でこちらを応援してくれているのだ。  そもそも、こちらの心を乱すようなことを死合い中に兄が言うものか。兄はいつも弟の勝利を願っているのだから。  ――でも、仮に幻聴だとしたらチェイニーの意図がわからないな。一体どういうつもりなんだ……。  こんな不快な幻聴を聞かせて、こちらの精神を掻き乱して、狂戦士モードを解こうというのだろうか。  魔法だか幻術だか知らないけど、よくもまあここまでやってくれるな……と感心してしまう。そうまでしてチェイニーは、死合いに勝ちたかったのか。そんなに自分とデートしたかったのか。  別にちょっと一緒に遊びに行くくらい、いつでも付き合ってあげたのに……。 「ただ遊びに行くんじゃなくてさ、彼が望んでいるのは恋人みたいなデートでしょ。私達みたいに、ラブラブイチャイチャしたかったんじゃないの?」 「……えっ……?」  兄の声で衝撃的な幻聴が聞こえて、アクセルは動揺した。思わず狂戦士モードを解除しそうになった。  ――お、落ち着け……! これもチェイニーの罠だ、幻聴の言うことなんて気にするな……!  それに恋人みたいなデートって、そんなのチェイニーは匂わしていたか?  いつも軽く世間話するくらいで、そういう匂わせ発言はなかったと思うのだが……。

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