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第1612話
兄は、その片方をこちらに差し出してきた。
「これ、新しいお守りだよ。レイ石とかいう珍しい石みたいだから、大事にしてね」
「あ、ありがとう……。本当に用意しておいてくれたのか……」
「約束だったからね。それと、ついでだから私の分も作っちゃった。採ってきた石が一人分じゃ大きすぎたんで、二つに割ってもらったんだ」
兄が二つの石を合わせる。
妙な凸凹のあった石はカチッと上手く嚙み合って、ひとつの八面体の石になった。まるでパズルのピースみたいだった。
「二つでひとつになるように、わざとこういう形にカットしてもらったんだよ。私は別にお守りなんていらなかったけど、せっかくだから二人で持つのも悪くないかなって。普通のお守りより特別な感じがするし」
と、兄が微笑んでくる。
「あと二回勝てば本当に優勝だね。最後まで油断せずに頑張って。お兄ちゃんはいつでもお前を応援してるからね」
「っ……」
そんなことを言われたら、なんだか我慢できなくなってきた。
アクセルは正面から兄に抱きつき、呟くように訴えた。
「兄上……俺、やっぱり兄上のことが一番好きだ。誰に何を言われても、この気持ちだけはずっと変わらない。それだけは信じてくれ……」
「ふふ、大丈夫。お前の気持ちはちゃんとわかってるよ。だからこれからも、ずっと私の側にいてね。私にとっての最強のお守りは、お前自身だからさ」
「……? 俺自身がお守りって……?」
よくわからなくて顔を上げたら、唇に軽くキスされた。
そしてにこりと笑みを向けられ、こんなことを言われる。
「これは何度も言ってるけど、私はお前がいるから『兄としてしっかりしなきゃ』って思えるんだよ。お前が私を『理想の兄』として見てくれるから、それにふさわしい振る舞いをしようと思える。今の私がいるのはお前のおかげなんだ」
「そう……だろうか。俺、兄上に『理想の兄上像』を押し付けて、負担を増やしてるんじゃないかと思うこともたくさんあるんだが……」
「それでいいの。それこそが私の拠り所だから」
「拠り所……?」
怪訝な目で見たら、兄がよしよしと頭を撫でてきた。
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