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第1614話
「そうかな……」
確かにだらしないところは多いし、時々訓練や死合いをサボってしまうし、アクセルに変な声をかけてきた男たちをすぐにシメ上げようとする。
棺に入っている間に浮気することもあるし、基本的に自由人だから毎日真面目にコツコツ努力する……みたいなことはあまりしないタイプだ(それでも強さをキープしているのなら、それはそれでいいと思うが)。
兄は続けた。
「それにホラ、以前獣化が進行して入院したことあったでしょ? あの時はホントにヤバかったんだ。ピピちゃんを斬っちゃったり、自分の腕を食べちゃったり……自分が壊れていくのが自分でもわかった。わかってても止められなかった。でも、お前が声をかけてきた瞬間、少しだけ我に返ったんだ」
「そう……なのか?」
「うん。食べたい、眠りたい、暴れたい……なんかそういう、野蛮な感情ばかりが渦巻いていたんだけど、お前が根気強く話しかけてくれたからちょっと自制が利いた。あの時ほど、お前がいてくれてよかったと思ったことはないね」
兄がこちらの顔を両手で挟み、コツンと額を当ててきた。至近距離から見る兄の顔は、いつもと変わらず美しかった。
「だから、これからもずっと側にいて。私が闇落ちしないように、ちゃんと見張ってて。そして万が一そういうことがあった時は、お前が私を止めてね。約束だよ」
「兄上……」
「お返事は?」
「ああ、もちろんだ」
微笑みながら頷く。
――兄上のことは、絶対に俺が守る……。
普段は頼りない弟かもしれない。でも、兄を想う気持ちは誰にも負けない。
だからこれからも、ずっと兄の側にいよう。兄がピンチの時は守ってあげられるよう、もっともっと強くなろう。
自分が生まれた意味があるとすれば、きっと兄を支えるためだろうから……。
もう一度しっかり抱き締め合って、アクセルはいただいたお守りを首に下げた。ほのかなレイ石の輝きがとても暖かく感じた。
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