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第1617話

 そんなやり取りがあったなんて全然知らなかった。  当時の兄を挑発するなんて、チェイニーもなかなか命知らずというか……。  ――いや、それだけ俺のこと想ってくれていたってことか……。  本当に略奪するつもりなら、わざわざ恋敵にそんなこと言ったりしない。兄の知らないところで、もっと積極的にアプローチしていたはずだ。  だからこれは挑発というより、むしろハッパがけみたいなものだと思う。雑に扱われているアクセルを見て黙っていられず、兄・フレインを焚きつけてくれたのだろう。  アクセルが早く兄に想いを伝えられるように。 「まあかなり正直なことを言うと、複雑ではあるんだよ」  と、チェイニーが頭を掻く。 「そりゃあアクセルとラブラブになれたらいいなとは思うし、フレイン様みたいな関係性を羨ましいとも思ってる。ただ、オレがその立場になれるかって言ったらそれも微妙だなってさ。オレはフレイン様みたいな実力はないし、いざって時にはそんなに頼りにならない。一緒に過ごしてきた期間も違うし、フレイン様以上の存在にはなれないんだ」 「それは……」 「それに、アクセルがフレイン様一筋なのは最初からわかってたし。本気の告白をしたところで振り向いてもらえないことは承知してたから、別に告白するつもりもなかった。気付いてないなら気付いてないまま、そっとしていようかと思ってたんだ」 「…………」 「でもまあ、せっかく死合えるチャンスに恵まれたからね。これを利用しないのも損かなと。オレの戦い方は初見殺しありきの不意打ちみたいなものだし……きっとこれっきり戦うこともないだろうからさ、この機に気持ちを全部ぶつけてやろうと思ったんだよね。『オレはこんなにきみのこと想ってるのに、きみって人は……』みたいな、ちょっとした八つ当たりかもしれない」 「う……」 「……ま、結局勝てなかったわけだけど。さすがにアクセルは強いよな」  チェイニーが苦笑してくる。

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