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第1618話

 ますます申し訳なくなって肩を落としていると、チェイニーは腰に手を当てて言った。 「そんな顔しないでよ。別に悩ませたかったわけじゃないんだ。アクセルが応えてくれなくても、オレの気持ちは多分ずっと変わらないからさ」 「え……」 「つまり、オレはこれからもアクセルを遠くから片想いし続けるよってこと。見返りはないけど、アクセルが幸せそうならまあいっか……みたいな」 「え、でも……」  本当にそれでいいんだろうか。チェイニーはそれで満足なのだろうか。  好きな人を遠くから片想いし続けなければならない気持ちは、アクセルだって多少はわかる。こちらに来たばかりの自分がまさにそうだったからだ。  あの時は兄が全然振り向いてくれなくて、「どうしたら自分の存在を認識してくれるか」、「どうしたらもっとこちらを気にかけてくれるか」等々、そんなことばかり考えていた。  結果的に今は想いを遂げられているけど、あの片想いが延々続いていたらと思うと、末恐ろしくなる。途中で頭がおかしくなって発狂しそうだ。  まあ、だからといって「フレイン様と別れてオレと付き合ってよ」などと迫られても困るのだが……。 「要するにアレだよ、推し活みたいな感じ?」 「推し活……?」 「推し活は基本的に一方通行だし、見返りもないじゃん? それでも相手のことが好きだから、つい応援したくなるっていうかさ。両想いにはなれないけど、そういう尽くし方もあるってこと」 「チェイニー……」 「まあそんな感じで、これからもよろしく。時々ファンサービスとして、一緒に遊びに行ってくれると嬉しいね」 「あ、ああ……」 「んじゃ、オレは仕事があるんで」  ひらひらと手を振り、チェイニーはスタスタと館を出て行ってしまった。本当に未練はないように見えた。  ……いや、内心はどうだかわからないけど。  ――……ありがとう、チェイニー。  本当に彼には敵わない。  そんな思いを噛み締めながら、アクセルも自宅に戻った。

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