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第1619話
「おや、おかえり。チェイニーくんと話はできたかい?」
兄がソファーに寝転びながら、こちらに視線を送って来た。本当にゴロゴロしながら待っていたみたいだ。
「兄上……」
アクセルはソファーの端に座り、ぽつりと投げ出すように言った。
「報われないってわかってるのに、ずーっと片想いなんてできるものなのかな……」
「? 何だい、それ? チェイニーくんにそう言われたの?」
「言われたというか、チェイニーはそういうスタンスで生きてるみたいで。本人は『推し活』って言ってたけど……」
「推し活ねぇ……」
「でもそんなこと、本当に可能なのかな……。しかも肝心の推しは、自分以外の誰かとイチャイチャしてるわけだろ……? そんなの見てたら、発狂しそうなものだけど……」
そう疑問を吐き出してみたら、兄はサラッとこう答えた。
「発狂しそうになるのはあくまでお前であって、チェイニーくんは違うんでしょ」
「え……」
「お前、自分が結構ヤキモチ焼きだってこと気付いてない? 私が友人と遊びに行っただけで『浮気だ!』って怒るし、好きな人には振り向いてもらわないと気が済まないみたいだし。それってだいぶ独占欲強めのタイプだよ?」
「え!? そんな……」
「まあお前は典型的な弟キャラだから、相手に構ってもらえるのが半ば当たり前みたいになってるのかもしれないけど。でも、みんながみんな、好きな相手に振り向いてもらえるとは限らない。それに『好き』のタイプもそれぞれ違う。お前みたいに『好きな人とは相思相愛になりたい』と思っているタイプもいれば、『例え片想いでも、好きな人が幸せそうならそれでいい』って思うタイプもいるの。チェイニーくんは後者だったってことじゃないのかな?」
兄がひょいと身体を起こして、続けた。
「そこは人それぞれの生き方なんだから、お前がどうこう言う資格はないんだよ。推し活で満足できるなら、それでいいじゃない。お前だって、『じゃあオレと付き合って』とか言われたら困るでしょ」
「う、うん……」
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