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第1631話

「……楽勝なわけあるかよ。アロイスはとんでもない馬鹿力なんだぞ。一発でも攻撃が当たったら即死してしまう」  これはどの死合いにも言えることだが、楽勝な相手なんて一人もいない。  ヴァルハラにいる戦士は、皆オーディンのお眼鏡に適った粒揃いの猛者ばかりだ。一定以上の実力があるのは当然であり、ランクが上がるほど化け物レベルの強さになっていく。  アクセルとアロイスは単純なランクではわずかにアクセルの方が上だが、実力はほぼ互角だと思う。決して「楽勝」などと油断できる相手ではない。  すると兄は、ふっと笑みをこぼして言った。 「お前はホントに真面目だね。誰が相手でも油断しないところは、偉いし尊敬できるよ」 「そりゃあ、俺は油断できるほど強いわけじゃないからな。兄上みたいなトップランカーにでもなれば、そこら辺の相手に苦戦することもなくなるんだろうが」 「別に私も油断してるわけじゃないんだけどね。ただ、ちょっと相手を観察していれば自分より強いかどうかなんてすぐわかるでしょ。お前だってそうじゃない? 『あ、この人強い』って見た瞬間わかるよね?」 「まあな。とにかく、明日からまたしっかり鍛錬しないと……」  夕食を平らげ、使った食器を洗い、念のためもう一度シャワーを浴びてから、軽くストレッチをして寝ることにした。  さっきまで仮眠していたから眠れないかなと思っていたけれど、意外とあっという間に寝付けてしまった。思った以上に疲れが溜まっていたみたいだ。 ***  翌日、アクセルはいつも通り起床して朝食前の鍛錬を行った。  庭に降りていった途端、ピピが目ざとく起きてきて小屋からすっ飛んできた。 「おはよう、ピピ。今日も元気そう……どわ!」  じゃれついてきたのかと思いきや、正面から勢いよくタックルされ、後方に吹っ飛ばされてしまう。反射的に受け身をとらなかったら、朝っぱらから大怪我するところだった。 「な、なんだ? どうしたんだピピ?」 「ぴー!」 「なんか怒ってる? え、なんだ? 俺何かしたか?」

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