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第1632話
ピピはダンダンと足を踏み鳴らすと、ムスッと一言こう答えた。
「おなか、すいた」
「……は?」
「おなか! すいた!」
それと同時に「ぐぅぅ……」とピピの腹の虫が鳴る。
それを聞いて、アクセルはハッと息を呑んだ。
「あっ……ごめん! 昨日ご飯食べてなかったのか? てっきり兄上が作ってくれたものだと……」
「ぴ……」
「ご、ごめん、ホントに……! 今すぐ作ってくるから、ちょっと待っててくれ」
慌ててキッチンに駆け込み、急いで野菜を切り刻み、まずはサラダ状態でピピに出してやる。
ピピはあっという間にサラダを完食し、「もっとおかわり」と催促してきた。
今度こそアクセルは朝食用の野菜スープを作り、ついでに自分たちの朝食も調理してテーブルに並べた。結局朝の鍛錬はほとんどできなかったが仕方がない。朝食後からしっかり鍛錬しよう。
「ありゃ、ご飯早いね? 朝の鍛錬は終わったの?」
今頃兄が起きてきて、しれっとそんなことを言ってくる。
アクセルは少し呆れながら、兄に苦言を呈した。
「兄上、昨日ピピのご飯作り忘れただろ。ピピが怒ってたぞ」
「え? ピピちゃんのご飯……?」
「そうだよ。俺のご飯はうどんを作ってくれてたけど、ピピのご飯は忘れちゃったんだな」
「えっと……」
兄はしきりに首をかしげ、昨晩のことを一生懸命思い出そうとしていた。
「あれ……作ってなかったっけ……? 一緒に作ったと思ったんだけど……」
「でもピピは『おなかすいた!』って言ってたぞ。普段そんなこと絶対言わないから、兄上の作り忘れに決まってる」
「そうかな……? いつもは夕食のついでに一緒に作ってるのに、昨日だけ忘れるとか、そんなことある……?」
「知らないけど、とにかくピピはお腹を空かせているんだ。この際だから俺たちの朝食も一緒に作った。せっかくだし、もう食べちゃおう」
兄は納得できないように頭を捻りつつ、洗面所に顔を洗いに行った。
そして戻ってきて席に着くと、ようやくこう行ってきた。
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