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第1633話
「言われてみれば、作ってない気がしてきた。ピピちゃんに悪いことしちゃったな……」
「……まあ、うっかりすることもあるだろ。次に忘れなければいいさ」
「でもおかしいなぁ……。普段は忘れないのに、何で昨日に限って忘れちゃったんだろ……。食事の準備をしていれば忘れないはずなのに……」
しきりに首をかしげているので、アクセルは少し怪訝に思った。
確かに兄はいい加減な部分が多いが、ピピの食事を作り忘れるなんてことはまずない。
――そう言えば、一緒に洞窟踏破した時もお互い記憶が食い違ってたよな……。
急に心配になってきて、アクセルはこう言った。
「兄上、大丈夫か? 頭の調子が悪いなら、専門の機関で診察受けて来た方がいいぞ」
「頭の調子って……お前、ナチュラルに失礼なこと言うよね」
「え? あっ……いや、ごめん……そういう意味じゃなくて」
「……まあいいけど。でも、なんか最近変なところで記憶違いを起こしてる気がするんだ。大事になる前にちょっと調べてもらってこようかな」
「それがいいよ。また獣化してしまったら大変だ」
思い出すだけで鳥肌が立つ。
あの時は兄が我を忘れてピピに襲い掛かったり、自分の腕を切って食べてしまったりと、本当にとんでもないことになったのだ。初めて見た時は衝撃だったし、四肢の欠損を見慣れている自分でも普通にぞっとした。
もうあんなことは二度と起きて欲しくないし、兄と離れ離れになってしまうのも御免だ。
ただ、今回の症状は獣化とはあまり関係なさそうではある。
「でもさ、検査するにしてもどこに行けばいいんだろう? グロアの隔離施設は閉鎖しちゃったよね?」
「……あ」
そうだった。
以前兄が隔離施設に入院している際、複雑なゴタゴタがあってグロアは自害してしまったのだ。
施設管理責任者がいなくなったので、もれなく隔離施設も閉鎖。
代わりの施設ができたという話も聞かないから、戦士たちが治療を行える施設は今のところ存在しない状況だった。
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