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第1635話

「ただいまー」  そわそわしていたら、ようやく兄が帰って来た。  アクセルは玄関にすっ飛んで行き、兄の生存を確認した。どうやら変わったところはないようだ。 「よ、よかった……兄上、ちゃんと帰ってきてくれた……」 「何それ? そんなに心配してたの?」 「当たり前だろ……。兄上、なんか調子悪そうだったし、全然帰ってこないし……。出先で倒れてそのまま入院しちゃったんじゃないかって、本気で心配したんだからな」 「そっか、ごめんね。バルドル様のところに行って話を聞いてみたんだけど、『魂が劣化してる可能性がある』って言われたんで、そのまま紹介状書いてもらって検査に行ってたんだ。それで遅くなっちゃったんだよ」 「……魂が劣化? どういうことだ?」  そんなの初めて聞いた。獣化とはまた別の症状なんだろうか。  すると兄は、キッチンで軽く水分補給し始めた。そしていつもの口調で教えてくれた。 「ほら、私たちって死んでも棺に入れば復活するじゃない? そうやって身体は常に新しい状態になるわけだけど、魂は何十年もずっとそのままなんだよ。そうなると、やっぱり記憶の欠損が起きたり、性格が荒っぽくなったり、やる気が出なくなったりして、徐々に劣化していくんだってさ。だから何十年かに一度、丁寧にメンテナンスして綺麗にする必要があるらしい。私もそれをやった方がいいですよって言われた」 「メンテナンスって……なんか道具みたいな言い方だな?」 「まあ私たちはオーディン様の眷属(エインヘリヤル)だから、実質道具みたいなもんじゃない?」  しれっとそんなことを言い、兄は続けた。 「そういうわけだから、私も近いうちに本格的なメンテナンス受けてこようかなって。また魂が劣化しまくって、お前に迷惑かけたら大変だもんね」 「そうか……。ちなみに、その魂のメンテナンスとやらはどのくらいの期間がかかるものなんだ?」 「詳しいことはわからないな。棺に入るよりかは時間がかかりそうだけど、私はそこまで重症じゃないから一週間くらいで治るんじゃない?」

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