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第1637話

「そっか。そうやって心配してもらえるのは、なんだか新鮮だな」 「……新鮮?」 「私は基本的に、あまり心配されない人生を送って来たからね」  言われて、アクセルはハッとした。  兄を見つめ返していると、兄は淡々と続けた。 「子供の頃は心配というより煙たがれる存在だったし、大人になって強くなるとなおさら誰も心配してくれなくなる。だから、今でも私を気にかけてくれるのはお前くらいだ。ちょっと調子が悪いだけで大袈裟に心配してくれるし、すごく新鮮に感じるんだよね」 「それはそうだろ……。他の誰が心配しなくても、俺だけは心配するよ。たった一人の家族なんだから」 「……ありがとう。本当に、お前がいてくれてよかったよ。たった一人でも家族がいてくれるっていいね」  シンプルな言葉だったが、兄が言うとそれなりの重みがあった。  ほとんど独りぼっちで両親にも育ててもらえなかったからこそ、家族のありがたみが身に沁みてわかるのだろう。 「……わかったよ。お前を泣かせるのは本意じゃないからね。死合いを見られないのは残念だけど、明日にでもメンテナンス受けに行ってくるよ」 「そ、そうか……よかった。ならその間、俺は頑張って死合いに勝ってくるからな。兄上は報告を楽しみにしててくれ」 「うん、期待してるよ。お前ならきっと、私の期待に応えてくれると信じてる」  そう微笑み、軽くこちらをハグしてくる。  ――今度はどうか、何事もなく治療が終わりますように……。  心の中で祈りつつ、アクセルは兄に聞いた。 「そうだ、夕食は何がいい? せっかくだから兄上の好きなものを作ってやるぞ?」 「んー、何でもいいかな。お前の料理は何でも美味しいから」 「そう言われると逆に困るんだけどな……。まあいいや、何か肉系の料理でも作ってくるよ」  キッチンに入り、アクセルは食料庫から食材をしこたま引っ張り出してきた。  明日からは一人になってしまうので、食べ切れない食材は今のうちに消費しておこうと思ったのだ。

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