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第1639話
「……ごめんな、兄上。役に立たない弟で。いつも兄上に守ってもらってるくせに、何で俺はいつも……」
ぐすん、と鼻をすすり上げる。
そうやって気持ちを吐露していたら、ますます自分が情けなく思えてきた。
何かある度に同じようなことの繰り返しで、自分が役に立てている実感が全くない。要するに、まるで成長していないということだ。本当に情けない……。
「ホントにお前は……いくつになっても甘ったれで困っちゃうねぇ」
と、兄が呆れたように笑う。
「あえて厳しいこと言うけど、今回問題あるのは私の方なんだよ? お前は私にいろいろ気を遣って心配する立場なんだ。風邪をひいた時を考えればすぐにわかるよね? それなのに、こっちに甘えて弱音吐いちゃってどうするのさ。そんなだから、いざって時に『頼りない』と思われちゃうんだよ」
「あっ……ご、ごめん……。余計なこと言った……。ほんとに……ごめ……」
言われて、ますます落ち込んでしまう。
居たたまれなくなってきて、声までしおしおと小さくなってきた。
――そうだよな……。自分が弱ってる時に逆に弱音吐かれたら、「こいつには頼れない」って思っちゃうよな……。
兄に頼ってもらえないのは、完全に自分のせいだということに改めて気づく。これでは兄も――例え大丈夫じゃなくても、「大丈夫だよ」と言わざるを得ないだろう。
それならせめて涙くらいは止めなきゃ……と思うのに、どうしても嗚咽が止まらない。自分の不甲斐なさが情けなくて、そんな自分も悔しくてたまらず、自然と涙が溢れてくる。
「……まあでも、そういう不完全なところが可愛いんだけどね」
と、兄が微笑み、優しくこちらを撫でてきた。
「小さなことで悩んじゃうところも、その悩みを素直に言えちゃうところも、勝手に落ち込んじゃうところも、子供みたいに泣いちゃうところも、全部可愛い。そういうところがあるから、お前はいつまで経ってもお前だなって安心もできるんだ」
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