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第1643話

 昼食の時間になったので、豆のスープを作りながら一緒に自分の昼食を作った。  アロイスの母・アニータに教わったレシピ通り、豆を潰して丁寧に漉し、野菜と一緒によく煮込んで最後にサワークリームで酸味を加える。  軽く味見をし、味に間違いがないことを確認して一人満足げに笑った。  ――よし、再現できた。  アロイスに押しつけられた鍋に出来立てのスープをたっぷり注ぎ、余った分は自分とピピで食べることにした。 「ピピ、ご飯だぞ」 「ぴー♪」  匂いを嗅ぎ付け、うさぎ小屋からすっ飛んでくる。  ピピも豆のスープはお気に入りらしく、小分けにしてやった鍋に顔を突っ込んであっという間に平らげてしまった。  食器を片付けて「さて午後の鍛錬を……」と庭に下りたら、ピピが「遊んでくれ」とじゃれついてきた。今日はやけにスキンシップが多い。  ――俺が寂しくならないように気を遣ってくれてるんだろうな。本当に賢いというか、優しいというか……。  せっかくなので、午後は筋トレがてら木材を投げてピピと遊んでやった。  ピピが好きな木材は中身がぎっしりしていて重いので、投げるだけでもかなりの筋力を要した。明日は変なところが筋肉痛になっているかもしれない。 「来たぞー! アクセル、スープできてるか?」  約束通り、夕方頃にアロイスが訪問してきたので、アクセルは台車に乗せた鍋をそのまま渡してやった。 「アロイスは筋肉痛とは無縁そうだな」 「キンニクツー? 何だそれ? 二番目の筋肉があるのか? なら今から鍛えるから教えてくれ」 「……いや、聞いた俺が馬鹿だった」  一日中みっちり鍛錬できたので、何だかんだで充実した日になった。身体の疲れも相まって、夜は自分のベッドで爆睡してしまった。  寂しい時は、余計なことを考えずひたすら身体を動かして寝るのが一番かもしれない……。 ***  五日後、アロイスとの死合い当日がやってきた。  珍しく緊張している感じはなく、朝もいつも通り起きられたし、朝食も普通に食べられた。

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