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第1644話
ストレッチをして身体を解し、忘れ物がないよう身支度をして、少し早めに家を出る。
――兄上のためにも、絶対勝たなきゃ……。
兄は今、メンテナンスを頑張っている。ならば自分も、死合いに勝って兄を待たなくては。
相手がアロイスでも関係ない。勝つと決めたら勝つ。それだけだ。
スタジアムに行き、選手専用出入口から中に入る。
観客専用出入口にも目を向けたが、死合いが始まる前から結構な客が集まっていた。いつもより混雑しているようにも見える。
――トーナメントも後半に差し掛かっているからな。それだけ観客も多いのか。
トーナメントが進むにつれて、強者同士の戦いも多くなる。
今回は自分とアロイスの死合いだが、一応自分たちのランキングは一〇〇位前後だ。戦士約三〇〇〇人の中での一〇〇位前後だから、相対的に見てかなりの強者であると言える(アクセル自身は全くそんな自覚ないけど)。
だから観客も、強者同士の血沸き肉躍る白熱したバトルを望んでいるに違いない。変な死合いをしたら、またチェイニーの時みたいに観客からヤジを飛ばされそうだ。
そんなことを考えながら、アクセルは控え室に入った。奥のロッカーに武器以外の持ち物を預け、時間になるまで軽く準備運動をする。一応、兄にもらったレイ石のお守りは首に下げておいた。
――不思議だな。今日は全然緊張してない……。
いつもなら死合い直前は緊張のあまりガタガタ震えてしまうのに、珍しくそういったことはない。前に一度戦ったことがある相手だからかもしれないが、今までにないほどリラックスしていた。
そうしてしばらく準備運動を続けていたら、死合い終了のアナウンスが聞こえて来た。前の死合いの決着がついたみたいだ。
遺体回収班がドタバタと廊下を走り回る音が聞こえる。死合い後は彼らが一番忙しい。
「さてと……」
もう一度武器の様子を確かめ、アクセルは気合いを入れて控え室を出た。
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