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第1645話

 スタジアム入場口で待機していると、四肢がバラバラになった戦士が担架に乗せられて運ばれて行くのが見えた。  前の死合いの対戦者なのだろうが、かなり手酷くやられていて少し引いてしまった。あれでは蘇生にもかなりの時間がかかる気がする。  気を取り直し、アクセルはスタジアム内に入場した。  客席が盛り上がっている中、反対側からアロイスも入場してきた。いつも通り巨大な剣を携え、しっかりした鎧を身に纏っている。鎧と大剣だけでもゆうに二〇キロは超えそうだ。あまり身長も高くないのに、どこにそんな体力・筋力を秘めているんだか……。 「よー、アクセル。今日はよろしく頼むぜ!」  アロイスがひょいと大剣を持ち上げる。 「この死合い含め、あと二回勝てば優勝だもんな。わくわくが止まらねぇわ」 「ああ、そうだな」  短めに相槌を打つ。  互いに指定の位置についたところで、天からヴァルキリーの声が降って来た。 『ただいまより、第一回トーナメント・グループD・準決勝戦アクセルVSアロイスの死合いを行います』  シン……とスタジアムが静まり返る。  死合いが始まる直前の静けさが、いい意味で緊張感を高めてくれた。 『死合い開始十秒前……九……八……』  お決まりのカウントダウンが始まる。  アクセルは少し腰を落とし、小太刀の柄に手をかけていつでも抜刀できるよう姿勢を整えた。  兄が見ていなくても、兄の応援がなくても、絶対勝たなくちゃ……! 『三……二……一……スタート!』  合図と共に、アクセルは一気に距離を詰めた。  そのまま両手の小太刀を抜き放ち、一度フェイントをかけつつ斜め後ろの死角からアロイスに斬りかかる。  ガキン、と金属同士がぶつかり合う音がして、硬い鎧に刃を防がれてしまった。 「さすがアクセル、前より攻撃が速くなってるな!」  振り下ろされた刃を物ともせず、腕でぐぐっと小太刀を押し返してくる。 「でも、オレだって負けてねぇんだぞ!」

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