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第1647話

 ――アロイス、まだ狂戦士になってないよな……? それでも風の刃を出せるのか……すごいな。  一瞬、魔法武器かとも思ったが、アロイスみたいな肉体派が魔法に頼るとも思えない。  ならばおそらく、素振りの勢いが強すぎて一緒に空気まで切ってしまっているのだろう。回避したつもりだったのに、結構深く切られてしまって驚きだ。 「う……」  次の攻勢に移ろうとしたのだが、足の痛みに引っ張られて間合いに踏み込むタイミングが遅れた。相手の肩が外れている今がチャンスだったのに、せっかくの機会を逃してしまった。これはよろしくない。  ――ここまで来たら、もう覚醒するしかないか……。  何となく先に覚醒した方が負けのような雰囲気があるが、身体の動きが鈍っている以上、そうも言っていられない。 「……タアアァァッ!」  アクセルは雄叫びを上げ、狂戦士モードに突入した。  先程まで感じていた足の痛みがなくなり、身体が軽くなって動体視力も飛躍的に向上する。  まずはアロイスの肩に刺さったままの小太刀を取り返しに行かねば。武器が片方しかない状態で戦闘を続行するほど、愚かではないつもりだ。 「よっしゃ、こっからが本番ってことだな! 燃えてきたぜ! ウオオォォ!」  アロイスもノリノリで雄叫びを上げる。負傷していない手に武器を持ち替え、真上から大剣を振り下ろしてきた。  振り下ろされた剣は地面を割り、地響きと共に足場をガタガタに崩していく。  崩れた足場を正確に見極め、軽快な足取りで跳躍しつつアロイスに近づき、肩の小太刀に手を伸ばした。 「甘いぜアクセル!」  小太刀の柄を掴んだ途端、お返しと言わんばかりにアロイスがこちらの腕を掴んできた。  そして小太刀を引き抜きがてら、勢いをつけて遠くの壁に向けてぶん投げられた。 「ぐっ……!」  壁に叩きつけられた衝撃が全身を襲う。一応受け身はとったものの、思った以上に衝撃が凄まじくて一瞬息が詰まった。狂戦士モードになっていなかったら、これだけで失神していたかもしれない。

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