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第1648話※

 ――はは……さすがアロイス、すごい馬鹿力だな……。  もともと力は強かったけど、重い鎧を纏って利き腕に怪我をしてもなお、当たり前に大人一人投げ飛ばせるのはさすがと言うよりない。  彼みたいな重装備の戦士は、鎧や武器に負けないようしっかり筋肉をつけている分、ちょっとやそっとの傷ではびくともしないということだ。  ましてや今は狂戦士モードになっているので、痛みすらも感じていない。向こうは力任せに殴り放題、斬り放題だ。致命傷を与えるまで止まらないだろう。  ――致命傷か……。  装甲兵の致命傷ってなんだ……と考えた時、真っ先に思い浮かんだのが兜と鎧の隙間である。要するに首だ。そこを正確に貫いてしまえば、さすがのアロイスも動けなくなる。  が、そんなことは当然アロイスもわかっているはず。首の隙間――鎖骨と喉仏の間辺りを狙われるのは承知していることだろう。  となると、そこを守るためにより一層防御が厚くなり、攻撃も激しくなるに違いない。 「っ……!」  あれこれ考えていたら、アロイスが再び大剣を振り下ろしてきた。  急いでその場を離れたが、素振りの衝撃でスタジアムの壁が一部半壊した。  当然地面も割れ、足場がバキバキに砕けて地面が陥没しそうになる。 「おい、どうしたよアクセル! 逃げてばっかじゃ勝負にならねぇぞ!」  そう怒鳴りつつ、アロイスはぶんぶん大剣を振り回してきた。  どうやら外れた肩を自分で嵌め直したようで、当たり前のように武器を利き腕に持ち直している。これも痛みを感じていないせいか。  ――く……確かにこのままじゃ、決定打を与えられないか……!  攻撃を回避しながら、アクセルは考えた。  そうだ、兄とランゴバルトとの死合い。あの時兄はどう戦っていただろうか。  確かあの時は、ランゴバルトの兜を思いっきりぶん殴って、自発的に兜を脱がせて、そこから……。  ――よし……!  崩れた足場を飛び跳ね、アクセルは再びアロイスに接近した。  大剣は回避できたが、一緒に放たれる風の刃に皮膚を切り裂かれ、至るところから血飛沫が飛んだ。

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