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第1649話※

「タアアァッ!」  両手の小太刀を振りかぶり、アロイスの兜を思いっきり殴りつける。ガァァン、と激しい金属音がして、反撃しようとしたアロイスが一瞬怯んだ。 「あああ、るせえぇぇ!」  苛立ったように勢いよく兜を外し、こちらに投擲してくるアロイス。  アクセルはそれを軽く鞘で打ち返し、再び間合いの外に出た。  ――よし、利いてる……!  狂戦士モードの時は、あらゆる感覚が研ぎ澄まされる。  それは聴覚も同様で、兜を叩かれてしまうと激しい振動が鼓膜に響き、一緒に三半規管もやられてしまうのだ。三半規管がやられると戦うどころではなくなってしまうので、アロイスはいち早く兜を投げ捨てたのである。  これは兄・フレインも使っていたテクニックだ。  ――頭部さえ出てしまえば……!  狙える箇所が増える。  アクセルはもう一度アロイスに接近し、素早く小太刀を振り下ろした。首を刎ねるように、左右の刃を思いっきりクロスする。 「ハアァッ!」  武器を振り下ろすのと一緒に、風の刃も飛んで行った。  アロイスは即座に首の防御に入ったみたいだが、庇った左腕に斬撃が直撃し、肘の少し上から左腕が吹っ飛んだ。頸動脈も軽く切り裂いたらしく、眼前で首元から勢いよく鮮血が吹き上がった。 「……ぅおりゃあぁッ!」  だが懐に入った瞬間、アロイスは身体を前のめりに突っ込ませてきた。  こちらに突撃するかのように大剣を片手で握り、一緒に身体も回転させて広範囲の回転切りを見舞ってくる。 「っ……!」  向上した動体視力で激しい斬撃をかいくぐったが、脇腹や二の腕を風の刃に切られてダメージを負った。  斬られた拍子に軽く身体を押し戻され、足場の悪さも相まって思わずバランスが崩れる。 「ぐっ……」  その一瞬で太ももに大きな衝撃が走った。  本能的な危機を感じ、確かめるより先にアロイスから距離を取り、大きく後ろに跳びずさった。  だが踏ん張るべき脚が片方なくなっており、危うくその場に転倒しそうになる。

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