1649 / 2296
第1649話※
「タアアァッ!」
両手の小太刀を振りかぶり、アロイスの兜を思いっきり殴りつける。ガァァン、と激しい金属音がして、反撃しようとしたアロイスが一瞬怯んだ。
「あああ、るせえぇぇ!」
苛立ったように勢いよく兜を外し、こちらに投擲してくるアロイス。
アクセルはそれを軽く鞘で打ち返し、再び間合いの外に出た。
――よし、利いてる……!
狂戦士モードの時は、あらゆる感覚が研ぎ澄まされる。
それは聴覚も同様で、兜を叩かれてしまうと激しい振動が鼓膜に響き、一緒に三半規管もやられてしまうのだ。三半規管がやられると戦うどころではなくなってしまうので、アロイスはいち早く兜を投げ捨てたのである。
これは兄・フレインも使っていたテクニックだ。
――頭部さえ出てしまえば……!
狙える箇所が増える。
アクセルはもう一度アロイスに接近し、素早く小太刀を振り下ろした。首を刎ねるように、左右の刃を思いっきりクロスする。
「ハアァッ!」
武器を振り下ろすのと一緒に、風の刃も飛んで行った。
アロイスは即座に首の防御に入ったみたいだが、庇った左腕に斬撃が直撃し、肘の少し上から左腕が吹っ飛んだ。頸動脈も軽く切り裂いたらしく、眼前で首元から勢いよく鮮血が吹き上がった。
「……ぅおりゃあぁッ!」
だが懐に入った瞬間、アロイスは身体を前のめりに突っ込ませてきた。
こちらに突撃するかのように大剣を片手で握り、一緒に身体も回転させて広範囲の回転切りを見舞ってくる。
「っ……!」
向上した動体視力で激しい斬撃をかいくぐったが、脇腹や二の腕を風の刃に切られてダメージを負った。
斬られた拍子に軽く身体を押し戻され、足場の悪さも相まって思わずバランスが崩れる。
「ぐっ……」
その一瞬で太ももに大きな衝撃が走った。
本能的な危機を感じ、確かめるより先にアロイスから距離を取り、大きく後ろに跳びずさった。
だが踏ん張るべき脚が片方なくなっており、危うくその場に転倒しそうになる。
ともだちにシェアしよう!

