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第1651話※
「ぐっ……!」
とうとう衝撃に耐えきれなくなり、アクセルもアロイスも後方に吹っ飛ばされた。
宙を飛んでいる際、視界の端にふわっとした金髪が映った。
――兄上……?
あれ、何で兄上がここに……? 今はメンテナンスをしているはずじゃ……?
それとも、これはただの幻覚かな……。死が迫ると、本来そこにはないはずのものまで見えるようになるのか……。俺の命も残りわずかだな……。
アクセルはそのまま地面に叩きつけられた。
「っ……」
全身に耐え難い激痛が走り、息ができなくなる。どうやら力を使い果たして狂戦士モードも解けてしまったみたいだ。
「う……く……」
立てない。身体に力が入らない。
アロイスはどうなった? まだどうなったか確認できていないぞ。せめて相手の状況を確かめなければ……勝敗がわからないうちにダウンしたら、それだけで敗色濃厚になってしまう……。
――だめだ、立たなきゃ……! 兄上のためにも、絶対勝って帰らなきゃ……!
視界が霞む。耳鳴りがする。
それでもアクセルは、気力だけでどうにか指先を動かした。
死合いでは、一秒でも長く生きていた方が勝者となる。俺はまだ生きているのだ。敗北判定には早すぎる。
「ぐ……」
最後の力を振り絞り、アクセルは地面に肘をついて上半身を起こした。
兄のためにも勝利したい。無様な格好を見せたくない。
その気持ちだけでどうにか起き上がり、続いて鞘を杖替わりにつき、片脚だけで直立してみせる。
だが倒れているところから急に起き上がったため、一気に血圧が下がって目の前が真っ暗になった。
――ああ、ちくしょう……せっかく立てたのに……。
もう何も見えない。何も聞こえない。
アロイスはどうなったのかな……追撃が来ないってことは、彼も必死に起き上がろうとしてるのかな……。
さっき見えた兄上の幻は何だったんだろう……幻なんかじゃなくて、早く本物の兄上に会いたい……。
やがて思考も闇に溶けていき、アクセルはとうとう息絶えた。
頭上からヴァルキルーの声が降って来ていたが、アクセルには届いていなかった。
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