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第1652話(フレイン視点)

『アクセル、アロイス、戦闘不能! よってこの死合いは引き分けとなります』  引き分けか……と、フレインはロイヤルボックスで顎に手を当てた。  魂のメンテナンスは何とか終わらせてきた。  どうしても弟の死合いを見たかったので、弟がまだ寝ている早朝に家を出て、急いでメンテナンスしてもらってきたのだ。  本当に時間ギリギリでスタジアムに駆けつけて――というか、席に着いた時には既に少し始まっていたけれど、それでも白熱した死合いを観ることができた。  アクセルはこちらに全く気付いていないようだったが、最後の最後まで「勝ちたい」という気持ちを滾らせていたように思う。「絶対勝ってくるから」という約束を守ろうと、命が尽きる瞬間まで戦おうとしてくれた。本当に一途な子だ。  フレインはサッと席を立ち、スタジアム側に下りて遺体回収班に声をかけた。そしていつも通り弟の遺体を引き取った。  ――こんなにボロボロになっちゃって、まあ……。  改めて担架に乗せられた弟の全身を眺める。  片脚が欠損しているだけでなく、二の腕や脇腹、他にも数え切れない裂傷があった。どこから見ても、全身血まみれのズタボロ状態だった。吐血もしていたから、きっと肺もやられていることだろう。これは蘇生にかなりの時間がかかりそうだ。  でも悲しくはない。むしろ、愛する弟がここまで頑張って戦ったことに誇りを覚えた。  重装備の装甲兵相手でも対等に斬り合っていたし、贔屓目抜きでかなり強くなったと思う。ヴァルハラに来たばかりの頃とは別人みたいだ。  フレインは担架ごと近くの台車に遺体を乗せ、それを押しながらオーディンの館に向かった。そのまま抱えてあげてもよかったけど、抱えた途端別の部位が千切れてしまいそうだったのだ。  ――それにしても引き分けって、結局どっちが残ることになるんだろう?  棺に運びながら考える。

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