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第1653話(フレイン視点)

 これはあくまでトーナメントだ。普通の死合いなら「引き分けでした、以上!」で済むが、トーナメントはどちらか一方を勝者として次に進ませなければならない。  例えヴァルキリーたちがポンコツでも、ここまで白熱な死合いをさせておきながら「ジャンケンで決めろ」なんて言うはずないし、どうやって決めるのか少し気になる。  ――もし理不尽な結果になったら、ヴァルキリーたちにクレーム入れてやろう。  そんなことを思いつつ、遺体を棺に入れに行った。なるべくゆっくり休めるよう、一回り大きな棺を使った。 「……おやすみ、アクセル。復活する頃にまた迎えにくるね」  血まみれの額に軽くキスをして、静かに蓋を閉めた。念のため、棺係に復活の目安を聞いてから家に帰った。 「ただいま、ピピちゃん」 「……ぴ?」  庭から家に入ったら、ピピが片耳を上げて反応した。うさぎ小屋から顔だけ出し、こちらを眺めてくる。  ――アクセルの時は、嬉しそうにすっ飛んでいくんだけどなぁ……。  まあピピは、自分より弟の方に懐いているから仕方がない。獣化しかけた時なんか、食料として斬ってしまった前科があるし。  苦笑しつつ、フレインは言った。 「ご飯作るの忘れちゃってごめんね。もうすっかり治ったから、心配しなくて大丈夫だよ。アクセルが帰ってくるまで、しっかりお世話するからね」 「ぴー……?」 「うん、アクセルね、さっき死合いが終わって棺で寝てるの。すごく頑張ってたからピピちゃんにも見せてあげたかったな」 「ぴ……」  ピピは興味なさそうにうさぎ小屋に寝そべって、居眠りをかましている。  弟には神対応、自分には塩対応なところも、あからさますぎて面白い。  まあいいや……と思いつつ、フレインは家に入って掃除をすることにした。  どうせ弟が帰ってくるまでやることがないのだ。外に遊びに行ったらまた変な疑いをかけられそうだし、しばらくおとなしく引きこもっていよう。

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