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第1658話

 アロイスも行くというので、二人で世界樹(ユグドラシル)の前に確認しに行った。  貼り出されているトーナメント表は、赤ペンで書き込まれている範囲がだいぶ広くなっており、トーナメントも残りわずかであることを示している。 「……って、え?」 「おいおい、何だこりゃ? 何でどっちの名前にも『×』がつけられてんだ?」  敗北した人の名前には、もれなく赤ペンで×が書かれる決まりだ。  でも自分たちはあくまで引き分けのはずだし、「引き分けは失格になる」なんてルール聞いたことがない。  ヴァルキリーたちが「いちいちサドンデスマッチをするのは面倒だから」と、強引に両方失格にしたとしか思えなかった。 「これはさすがに看過できないな。ちょっとヴァルキリーたちに文句言ってくる」 「オレも行くぜ! どっちかが勝ち上がってるならともかく、両方失格なのは納得できねぇ。これじゃトーナメントの意味ねぇじゃん」  アクセルは世界樹(ユグドラシル)を通り、ヴァルハラの運営事務局があるヴァルキリーの洋館に向かった。  ヴァルキリーたちが住んでいる洋館は、厳密にはアース神の世界(アースガルズ)の一部に含まれる。洋館の規模も相当なもので、巨大な城がいくつも連なってひとつの大型施設のようになっていた。  ――相変わらず大きいよな……。一体何人のヴァルキリーがここで暮らしているんだか……。  訪れる機会は滅多にないけど(何か特別な書類を提出する時くらいしか来ない)、それでもこの大きさには少し呆れてしまう。バルドルの館ですら、ここまで大きくはなかったはずだ。  一〇〇〇人くらいは当たり前に生活できそう……と思いつつ、アクセルは運営事務局の受付窓口に行った。窓口と言っても、洋館の玄関先にテントのようなものが貼ってあって、そこに三人ほどのヴァルキリーが待機しているだけだが。 「あの、ちょっとすみません」 「ああ、戦士(エインヘリヤル)ですか。何か用ですか?」

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