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第1661話
腹立たしい気持ちはよ~くわかるが、頼むから受付で暴れないでくれ。できれば話し合いだけで穏便に済ませたいんだ……!
「あら、どうかなさいましたか?」
その時、受付に一人のヴァルキリーがやってきた。女性にしてはすらっと背が高く、身体の線が出るスマートな鎧を身に纏っている。遠征帰りなのか、鎧がところどころ血に汚れていた。
手にはヴァルキリー共通の得意武器・長槍を装備しており、そちらにはあからさまな汚れが付着している。
「シグルーンお姉さま……!」
受付をしていた三人のヴァルキリーが、一斉に彼女――シグルーンとやらに駆け寄った。
「お帰りなさいませ。お勤め、ご苦労様でございました」
「武器と防具をお預かりします。次のお勤めに備えて、ピカピカに磨いておきますわ」
「先に湯浴みなさいますか? それとも、軽く食事をお召し上がりに?」
半ば媚びるように、シグルーンを気遣っている三人。
先程の塩対応とはあまりに違う態度に、アクセルもアロイスも目が点になってしまった。
――なんだこの違いは……。態度を変えるにしても、あからさますぎだろ……。
というか、ヴァルキリーの中にも序列があるんだろうか。
ヴァルキリーはみんな同じだと思っていたけれど、彼女たちの様子を見るに上下関係みたいなものは存在しているのかもしれない。
シグルーンは優雅に微笑みつつ、言った。
「ありがとう。でもお構いなく。自分でやりますから。……ところで、これは何の騒ぎですか?」
「ああ、シグルーンお姉さま聞いてください! あの戦士 たちが、私たちの仕事にケチをつけてくるんです!」
「なんか昨日の死合いがどうとか、引き分けにしろとか、失格を取り消せとか、いろんな要求をしてきて……」
「そうです! 戦士 のくせに生意気ですよね!」
「まぁ、それはそれは……」
表情を変えずに話を聞いていたシグルーンは、今度はこちらに顔を向けて来た。
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