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第1667話

「おや。お前も、見ただけで相手の強さがわかるようになったのかい?」 「それは、まあ……。毎日粒揃いの猛者ばかり見てると、だんだんそういう目も肥えてくるのかもしれないな」 「すごいじゃないか。お前の成長には驚かされてばかりだ」 「いや……兄上に比べればまだまださ」  だけど、そう言われて悪い気はしない。少しずつでも自分が成長していっているのなら、嬉しい限りだ。  アクセルは昼食を作りながら話を変えた。 「俺のことはともかく、兄上は? 魂のメンテナンスとやらは終わったのか?」 「うん、それはバッチリ。職員には嫌な顔されたけど、無理を言って『なるはや』で終わらせてもらったんだ。どーしてもお前の死合いを見たかったからさ」 「え……?」 「お前とアロイスくんは、系統は違うけどどっちも堂々とした戦いをするタイプだからね。コニーくんみたいな飛び道具とか、チェイニーくんみたいな暗器を使うわけじゃない。だから絶対白熱した死合いになると思った。だから何としても生で観戦したくて、お前が寝た後すぐに出掛けたんだよ」 「ああ、そうだったのか。道理で……」  最後の攻撃で吹っ飛ばされ、宙を舞っていた時のことを思い出す。  あの時視界の端に兄の姿が映ったけど、あれは気のせいではなかったのか。本当に兄が観戦しに来ていたのか。死ぬ間際の幻覚ではなかったのか。  そう思った途端、別の懸念が頭に浮かんできた。 「あの、兄上……俺、ちゃんと戦えていたか? 誰が見ても恥ずかしくない死合いができていたか?」 「やだな、何を気にしてるの? 贔屓目抜きで、お前は本当にいい死合いをしていたよ。スタジアムもここ一番盛り上がっていた。心配無用だね」 「そ、そうか……。俺、本当に夢中で周りのことなんて全然見えてなくて……。自分は楽しかったけど観客はどうだったかなって、今更ながら気になってしまった」 「それでいいんだよ。周りを忘れるくらい楽しい死合いだったなら、見ている側も絶対楽しんでるからね」

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