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第1668話

 そう言って兄は、優しくこちらの頭を撫でてくれた。 「まずはお疲れ様。よく頑張ったね、いい子いい子」 「……ありがとう。あとは結果がどうなるかだな」 「大丈夫。これでまた失格とかになってたら、今度こそお兄ちゃんがクレーム入れに行ってあげる」  それは心強い限りだ。  アクセルは微笑みながら、キッチンで野菜を切り刻んだ。留守番していてくれたピピのためにも、たっぷりの野菜スープを作ってやらねば。  その後、完成した昼食をベランダに持って行って三人で仲良く食事した。三人揃うのは数日ぶりだったので、何気ない食事が一層楽しく感じた。  食事をした後はいつも通り庭で鍛錬をし、いつも通りの日常を過ごした。  復活したばかりだからハードな鍛錬は控えておいたけど、兄と一緒にランニングしたり素振りしたりできてこれも楽しかった。  兄自身もメンテナンス後で身体の調子がいいのか、いつにも増して太刀筋のキレが鋭くなっているようだった。  ――今日もいい一日だったな。  充実した一日を過ごすことができ、ベッドに入って「さあ寝るか……」と掛け布団に潜り込んだ時、 「ちょっとちょっと、なんで当たり前に寝ようとしてるのさ。お前、ご褒美いらないの?」  兄がこちらにのしかかってきて、アクセルはハッと我に返った。  兄のいう「ご褒美」とは当然そういう行為のことであって、死合いに勝つと毎回たっぷり可愛がってくれるのだけれど、そう言えば今日はまだご褒美もらってなかったような……。 「というかお前って、こっちが言い出さなきゃしれっとスルーするところあるよね。前から思ってたけど、もしかしてこういうご褒美、興味ない?」 「えっ!? い、いや、そういうわけじゃ……」 「なら、たまにはお前からおねだりしてみてよ。いつも私が強引に迫ってるみたいでアレだからさ、お前の意志も示して欲しいな」 「っ……」  そんなことを言われ、かあっと頬が熱くなった。  ――うう……兄上、またそんな意地悪な要求を……。

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