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第1679話
すると兄はにこりと微笑み、優しく身体を抱き起こしてきた。
「お前がそう言うなら挿れないよ。とりあえず身体を綺麗にしようね。もういろんなところがぐちゃぐちゃだし」
「う……うん……?」
……あれ? おかしいな。いつもなら、ここでも強引に突っ込んでくるんだけどな……。
腑に落ちない気持ちを抱えながら、アクセルはおとなしく兄に身を任せた。
自分で洗えると言ったのだが、兄は「遠慮しないで」とバススポンジを取り上げ、こちらの身体を丁寧に洗ってくれた。
すっかり綺麗になった状態でバスタブに並んで入り、ゆっくりと湯に浸かって疲れを癒す。
「はあぁ……やっぱり、お前とお風呂に入るのはいいねぇ」
などと、兄がこちらに寄りかかってくる。
「ね、たまには外の露天風呂でゆっくりしない? ピピちゃんも喜ぶだろうし、せっかくあるんだから使わないともったいないよね」
「あ、ああ……そうだな。明日あたり、掃除しておくよ」
「ありがとう。でもその前に、ちゃんとトーナメント表の結果を確認しに行こうね」
「ああ……そうだったな」
そんな会話をしつつ、アクセルはチラリと兄を見た。
――見た目は何も変わってないんだけどな……。中身も、大きな違和感があるわけじゃないが……。
とはいえ、今までの振る舞いを考慮すると「おや」と首をかしげたくなる部分もある。
モヤモヤしたままなのも嫌なので、アクセルは思い切って尋ねた。
「兄上、メンテナンスして何か変わった……?」
「ああ、うん……。変わったというか、よりフレッシュになった感じはするね。何というか、頭がスッキリした気がするんだ」
「スッキリ……?」
「うん。何というかこう……いろんな面で自制が利くようになったというか。メンテナンス前の私だったら、お前がヘロヘロになっても『まだイケる』って結構強引に進めてたけど、今はそこまでしなくてもいいというかね。『お前が限界なら今日はやめとくか』って抑えられるようになったんだ」
「え……」
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